コア・バリュー経営のメリット

コア・バリュー経営のもたらすメリットは数多く、種類も様々ですが、ここではコア・バリュー経営の実践例において特によく挙げられるものを選んでみました。

メリット1 戦略的な企業文化の構築

企業文化は空気のように「あってあたりまえ」の存在でありながら、実は企業の発展をプラスにもマイナスにも左右する極めて重要なファクターです。ですから、企業のトップやリーダーとしては、組織のプラットフォームとして、会社の使命や社会的意義をより良く全うすることを可能にする企業文化を意図的につくりこんでいくことが重要です。
 
会社の使命にふさわしい企業文化を構築するためには、まず、現時点で社内に存在するドミナント(主要)な価値観の見極めを行うことが必要です。人間誰しも「長所」と「短所」があるように、どんな会社にも「良い価値観(使命の実現を促進するような価値観)」と「悪い価値観(使命の実現の妨げになるような価値観)」があります。社内の言動に影響している主要な価値観をすべてあぶり出して、今ある良いものを強化し、使命の実現に向けて足りないものを明示し、補強していくことが必要なのです。
 
ウェブが我々の日常生活に浸透していくにつれ、企業が提供する商品やサービスのみならず、企業そのもののあり方が、一般消費者の目にも筒抜けに見えるようになってきています。
 
かつては、消費者に好まれるようなイメージを創り上げ、それを「ブランド」と呼んで掲げてきましたが、今日、そうした「ブランド」の一貫性が問われるようになってきています。単なるイメージ戦略に終わることなく、企業の在り方と「ブランド」が一致し、その価値観や信条ゆえに顧客に愛され、顧客のロイヤルティを得るという時代が到来しているのです。

メリット2 長期に存続する会社の形成

日本は長寿企業国家です。創業100年を超える会社がなんと26,000社も存在します。日本では、コア・バリュー経営をレバレッジした事業承継の成功例が次々と生まれています。

コア・バリュー経営が事業承継に役立つ理由は大きく三つあります。

  1. 承継を機に、事業を「再起動」させるうえで方向性を指し示すコミュニケーション・ツールになる
  2. 先代と会社を築いてきた人たちを若い社長が率いていくうえで、「人」に従うのではなく、「コア・バリュー(価値観)」に従う習慣をつけることで摩擦を軽減できる
  3. コア・バリュー経営の導入自体が、新しい組織をつくり、従業員のコミットメントを得るうえでのプロセスとして活用できる

社歴の長い企業ほど、「会社として、これまで大切にしてきたもの」を整理しつつ、「目指したい方向性」を明確に打ち出して会社の皆が納得できるような形で指し示すことが必要になります。コア・バリュー経営の土台となる「コア・パーパス(企業の社会的存在意義)」や「コア・バリュー(中核となる価値観)」は、新しい社長のビジョンを定義し、伝える、効果的なコミュニケーション・ツールになり得ます。

また、「存在意義」や「価値観」は長期にわたり組織の一貫性を維持する糊です。時代は変わり、市場も変わりますが、そうした変化の中で「レジリエント」で結束の固い組織をつくります。

メリット3 偉大な会社をつくる

近年、アメリカでは、規模は小さくとも、地域社会や働く人や顧客に大きなインパクトを与える「偉大な会社」が、「スモール・ジャイアンツ」と呼ばれて注目を浴びています。この「大きくなることではなく、偉大になること」を志す中小企業たちの多くは、規模や市場シェアではなく価値創出にフォーカスを置きながら、従業員や顧客の熱烈な支持をエンジンに、同業他社の群を抜く成長率と利益率を打ち出しています。
 
「偉大な会社」の柱は、「社会/働く人/顧客」への価値創造ですが、コア・バリュー経営では、「コア・パーパス(企業の社会的存在意義)」と「コア・パーパス(中核となる価値観)」を基盤としてこの実現を後押しします。コア・バリュー経営は、まさに「スモール・ジャイアンツをつくる」経営手法だといえるのです。

メリット4 健全な組織の創造

従業員エンゲージメント(仕事への熱意度)の低さが問題になっています。米ギャラップ社によると、日本のワークフォースに「熱意あふれる社員」が占める割合はわずか6%。これは調査対象となった139カ国中132位とダントツ最下位クラスです。また、職場のメンタルヘルスも社会問題化しています。働く人の6割が仕事で強いストレスや不安を感じているといわれ、メンタルヘルス上の理由で休業、あるいは退職に追い込まれる人も少なくありません。
 
エンゲージメントの低さや職場のメンタルヘルスの問題は、会社の生産性にも直接的・間接的両方の影響を及ぼしています。コア・バリュー経営は、「目的意識」と「価値観」において一貫性の高い会社をつくり、結果としてエンゲージメントを向上させ、ストレスの少ない職場をつくることに貢献しています。アメリカのコア・バリュー経営実践企業の中には、従業員エンゲージメント率なんと98%という会社もあるくらいです。

メリット5 全員参加の組織をつくる

近年、「権限委譲」ということが盛んに言われていますが、たとえばサービスの現場で「働く人にすべてを委ねる」というのは現実的には決して簡単なことではなく、経営者にとっては怖いことでもあります。
 
というのも、「皆さん、今日から、自分で考えて判断して、行動してください」と言ったところで、個々人が会社が望むような結果を出してくれるかどうかはわからないからです。ですから、一般のサービスの現場では、「ルール」や「マニュアル」でもってサービスを「均質化」しようとします。その結果、紋切り型な対応となり、顧客の人間性を無視した血の通わないサービスになってしまうのです。
 
コア・バリュー経営では、共通の目的(コア・パーパス)で働く人の心をひとつにし、共通の価値観(コア・バリュー)に基づいた行動や意思決定を徹底して、会社で働く一人ひとりが自らの能力や創意工夫を発揮し、伸び伸びと自由に働いて成果を出せるような会社をつくります。
 
昨今、日米のビジネス界で「セルフ・マネジメント(自主管理)」が話題になっていますが、「セルフ・マネジメント」を実現するためには、組織内の大多数による価値観の共有が必要不可欠といえます。