コア・バリューとは

コア・バリューって何?

コア・バリューとは「中核となる価値観」。人が日々生きるうえで、判断を下したり、優先順位を定めたりするうえでその「ものさし」になるものを指します。どんな人も、意識的・無意識的にかかわらず各々の「コア・バリュー」を持っています。
 
会社における「コア・バリュー」とは、企業が「会社で働く人たち全員に共通して持っていてもらいたい」と考え、意図的かつ戦略的に定める価値観です。そして、社員がその「共通の価値観」に基づいて日々考え、行動することを促します。会社の「コア・バリュー」は、言い換えれば、企業の「魂」や「信条」、またそこで働く個人の「考え方」や「働き方」の基盤になるものであるといえます。
 
個々人に「価値観」が備わっているように、企業や家庭、国家など、複数の人が集まってできるグループには必ず「共通の価値観」が存在します。それは、意図的に定めなくても、複数の人が集まって生活することにより、自ずと形成されていくものです。そこで、組織の構成員が、意図的かつ戦略的に定め、育んでいくものを「コア・バリュー」という特殊な言葉で呼び、区別しています。

コア・バリューを明確に定めることのメリット

個人レベルでは、「自分の価値観」というものを意識することなくなんとなく持っているのが普通です。特に「意識」していなくても、自ずと価値観に基づいて判断を下しているものですが、それでも、緊急の事態にとっさの判断をする場合や、状況が複雑な場合などに、自分の「価値観」というものを明確に意識していないと、他人の意見に左右され、押し切られてしまい、後悔することが少なくありません。
 
自分の価値観を明確に認識していれば、意識的な判断ができ、自分にとって不本意な行動をすることがなくなるので、後悔の少ない人生を送ることができます。また、自分が信じることや大切にしていることを貫き通すことで、満足度が高く、充足感に溢れた、「筋の通った」生き方ができます。
 
このように、コア・バリューを明確に定めておくことがもたらすメリットは個人レベルでも多大なものですが、これが、会社のような「組織」となると、そのメリットは何十、何百倍にもなります。
 
まず、会社のコア・バリューを明確に定めておくことによって、会社の信条や方針に基づいた意思決定や判断を下しやすくなります。
 
また、「コア・バリュー(共通の価値観)」を働く人皆で共有することによって、社内で統制のとれた判断、意思決定、行動ができるようになります。
 
また、「コア・バリュー」は社内の人間関係のルールを形づくるものでもあります。共通の価値観をもった人、つまり、同じことを「重要」と考える人が集まっていると、人間関係の摩擦が起こりにくくなり、快適な会社生活を送ることができ、満足度やエンゲージメントも向上します。
 
職場での「ストレス」や「バーンアウト(燃え尽き症候群)」が社会問題として注目される今日、会社の「コア・バリュー」を定め、皆でそれを日々、実践していくことは、このようなメンタルヘルスの問題の軽減にもつながります。

コア・バリュー策定のプロセス

◆創業者や経営トップが原案をつくる

会社のコア・バリューを策定する際には、個人のコア・バリューを考えるのや認識するのとは違い、組織の構成員である複数・多数の人たちの「コンセンサス」を得ることが必要ですが、そうはいっても、そのプロセスを始めるための土台がなくてはなりません。
 
創業者や経営者は、会社の在り方について人並み以上の情熱や思い入れをもっているものです。ですから、コア・バリューを策定するにあたって、創業者や経営者が率先して土台をつくることが望ましいです。
 
会社の「コア・バリュー」を定めるうえでは、会社の「歴史的」なこと、つまり、成功体験や失敗体験、創業の背景や目的などが重要になってきます。そのため、創業の経緯を自ら体験してきた創業者や、また、二代、三代と続いた会社であれば創業者の家族や会社で長年働いてきた人たちのインプットを得ることが極めて有益であるといえます。

◆現場の意見をつのる

仮に、創業者や経営者がコア・バリューの土台、あるいは原案をつくるとしても、会社のコア・バリューは、会社の上層部から現場への「命令」のような押しつけでは浸透のしようもありません。現場の人たちの共感と賛同を受けて、日々、それが実践されてこそコア・バリューは効果を発揮します。
 
ですから、創業者や経営者の意見だけが通るというのではなく、社内のあらゆる部門、部署、チームから人を集めて、コア・バリューの定義に携わる「委員会」をつくるというのが好ましい方法です。その「委員会」に属する人たちが、個人的に現場の人たちの意見を一人ひとり聞く、あるいはご意見箱を設けるなど、現場のフィードバックを得る何等かの方法をとることにより、現場の人たちが「理解」「共感」「納得」できるコア・バリューにすることが必要です。

◆絞り込む

世の中には星の数ほど価値観が存在します。人として「大切」と思える価値観はたくさんありますが、そのすべてが会社の「コア・バリュー」としてふさわしいわけではありません。「コア・バリュー」とは、会社の「中核となる」価値観、つまり、企業が自らのアイデンティティとして、「これだけは譲れない」というもの、戦略的に重要なものとして絞りこんだ結果、定義されるものです。
コア・バリューに決まった数はありませんが、働く人たちが簡単に覚えることができ、日々、実践できるという観点から、全体で十個以内に収めることが望ましいと思います。また、「コア・バリュー」とは、複数の要素が集まり、相互的に作用してひとつの仕組みをつくるという「体系」であるため、一個や二個ではなく、「体系」として機能するためにある程度の数が揃っていることが必要だと思います。

会社のコア・バリューを考えるうえでのヒント

会社のコア・バリューを策定するにあたって、上にあげた「委員会」内部や、その他社員間のディスカッションが有益かつ重要です。

しかし、いきなり「うちの会社のコア・バリューは?」と問われても、たいていの人は答えようもありません。多くの人は自分のコア・バリューについてさえ考えたこともないでしょうから、ましてや会社のコア・バリューについては即答できない人も多いでしょう。有意義な実りあるディスカッションにするために、以下のヒントをきっかけにして、話し合いをスタートさせることをお薦めします。

  1. 会社の「名物社員」、あるいは皆から尊敬されている・お手本にされている社員をひとり思い浮かべる。その人のどんな在り方・行動・考え方が尊敬されている/お手本にされているのだろうか。その根底にある「価値観」は何だろうか。
  2. 会社で称賛される、あるいは奨励されている在り方・行動・考え方は何か。その根底にある「価値観」は何か。
  3. 会社の「あたりまえ」を考える。こういう時は、うちの会社ではこうするのが「あたりまえ」という例を挙げてみる。その「あたりまえ」の根底にある「価値観」は何か。

パーソナル・コア・バリューについて

会社のコア・バリューに対して、個人がそれぞれ持っているべきなのが「パーソナル・コア・バリュー」です。会社の経営トップやリーダーが自分自身の「パーソナル・コア・バリュー」を明確に持っていることは極めて大事です。自分にとっての「パーソナル・コア・バリュー」の大切さ、「パーソナル・コア・バリュー」が自分の日々の生き方に与える影響を認識・実感してはじめて、会社の「コア・バリュー」の重要性を理解し、その会社ぐるみの実践を推し進めることができます。

パーソナル・コア・バリューを考えるうえで、以下のような問いかけがよいヒントになります。

  1. 私にとって「成功」とはどんなことを指すのか。その根底にある「価値観」とは何か。
  2. 自らの人生の中で転換期となった「重大な決意(あるいは選択)」は何か。その根底にある「価値観」とは何か。
  3. 私が尊敬する人はどんな人か。その人が体現するどんな価値観に共感するのか。

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