コア・バリュー経営の成功事例

コア・バリュー経営は、会社の規模や業界、業種、事業運営の地域を問わず、多種多様なタイプの企業によって、導入、実践され、目覚ましい成果を上げています。

事例1:ザッポス

靴のネット通販会社としてはアメリカで最大規模のザッポスは、その「サービス文化」で名を築きました。CEOのトニー・シェイは、会社の創成期から「文化を築けば結果は後からついてくる」をモットーに掲げ、「サービスを通してWOWを届けよ」というコア・バリューを中核に据えてサービス精神を基盤とした会社を育んできました。

その「サービス精神の徹底」は、人の心を揺り動かし、口コミを呼ぶ感動のストーリーを生んできました。病気で母親を亡くしたばかりのお客さんにサプライズの花束を贈る話は中でも特に有名で、「ザッポス流サービス」を象徴するものとして幾度となく語られています。ザッポスのコンタクトセンターのオペレーターには、「顧客を満足させるためならほとんど何をしてもよい」と言われるほどの幅広い裁量が与えられているのです。
また、この「サービス精神」は社外の顧客だけではなく、社内の同僚同士や社外の取引先にも同様に向けられています。

ザッポスには、社員が社内で後から来る人のためにドアを開けて待っているという習慣があります。また、同僚が困っている時には進んで助け合う、そして、常にお互いを「びっくりさせたり」、「楽しませたり」しようと気遣う文化があります。ザッポスの本社には多くの取引先(メーカー)が商談にやってきますが、商談の際に商材の送料をザッポスが負担してくれるというプログラムまであるのです。このプログラムのおかげで、取引先の担当者は本社を手ぶらで訪問することができます。まさに、至れり尽くせりのサービスなのです。このようにして、ザッポスは「企業文化」を基盤に、顧客、社員、取引先から愛される会社を築いているのです。

事例2:エアビーアンドビー

サンフランシスコに本社を置き、「空き部屋のマーケットプレイス」をグローバル展開するエアビーアンドビーは、その画期的なビジネス・モデルのみならず、卓越した企業文化でも知られています。

エアビーアンドビーの創設者兼CEOであるブライアン・チェスキーは、シリコンバレーのカリスマ投資家であるピーター・ティールから投資を受ける際に、会社の長期的繁栄を目指すためのアドバイスを求めたところ、「企業文化をぶち壊すな」と言われたというのはあまりにも有名な話です。エアビーアンドビーはブライアン・チェスキーを中心にその後忠実に企業文化の確立と維持に力を入れ、今ではシリコンバレーでも最も優れた企業文化をもつ会社のひとつとして高い評価を得るようになりました。

コア・パーパス/企業使命として「Belong Anywhere/誰もが居場所を感じられる世界をつくる」を掲げ、それを中心に企業文化が形作られているのがエアビーアンドビーの特徴です。例えばコア・バリュー(社員が共有する価値観)のひとつに掲げられている「ホストらしく」ですが、単に「会社」が「顧客」に対して「ホストらしく振舞う」というのではなく、社内の同僚同士の関係を含み、会社を取り巻くコミュニティを構成するすべての人たちに対する「ホスト(おもてなし)精神」が徹底されているのです。

たとえば、世界各地でコンタクトセンターを運営し、空き部屋の提供者(ホスト)や宿泊客(ゲスト)が24時間いつでも相談できるようにしています。トラブルの発生時など、直ちに問題を解決したり、必要とあらば代わりの部屋を斡旋できるようにしているそうです。また、ホストとは「コミュニティ(仲間)」のような関係を築くように努めています。日本であれば生け花の講習会を開いたりして、国の文化について社員とホストが共に学び、タッグを組んで、ゲストに対して最高の「居場所」を提供できるようにしているのです。

事例3:日本自動ドア株式会社

日本自動ドア株式会社は、その名のとおり、自動ドアの専業メーカーであり、主にコンビニやコーヒーショップなど一般店舗を対象にサービスを提供しています。全国での納品台数は20万超。年間の販売台数は1万台にも上ります。

創業1966年、52年の歴史を持つ会社ですが、2011年に二代目の吉原二郎氏が新社長に就任された際に、「自動ドアの存在意義」について見つめなおし、理念浸透の手段として「コア・バリュー経営」の導入に着手しました。

日本自動ドアでは、単に開いて閉まる機械装置を売っているのではなく、「手でドアを開閉することにデメリットを感じている全ての人々の悩みを解決すること」を使命に掲げています。その使命を糧に、1.感染症予防、2.バリアフリー化、3.省エネ社会の実現、4.入退室管理を通じた防犯対策、5.環境災害/自然災害から居住者を守る、という「五つの存在意義」を定め、イノベーションの糧としています。

「イノベーション精神」を育み、その実践を促すための様々な仕組みがありますが、そのひとつが「アイデアの1000本ノック」という社内SNSです。何でも、社員さんが新商品やサービスのアイデアを投稿すると一本につき1,000円が支給されます。アイデアの質の良しあしではなく、「アイデアを出す」ということが習慣化した企業文化の育成に大いに貢献しています。こういった「イノベーション精神の醸成」が、「キッズデザイン賞」の11年連続受賞という快挙も生んでいます。

また、近年では、新規事業部として「林業部」を立ち上げ、木製自動ドアの開発・商品化にも乗り出しています。その他にも、医療施設や福祉施設、飲食店などを対象として、ドアノブや手のひらに汚染物質がどのくらい付着しているのかを測定・検査し、除菌用品を提案・提供、また、接触感染予防のための自動ドア化の提案をする「環境検査サービス」、卵の殻を加熱処理し、除菌剤を製造する事業など、先にあげた「五つの存在意義」を基盤とし、「自動ドア」という枠を超えた新しい領域のイノベーションへと常に拡張を続けているのです。

コア・パーパスとコア・バリューの徹底的な追求が、企業の「独自性の確立」につながり、事業成果も生んでいる事例です。