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【ダイナ・サーチ訳注】
下記は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです。

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ビジョン・ステートメントの書き方

企業の「中核」となるのは、コア・パーパスコア・バリュー、そしてビジョン。これらを明確にし、戦略の柱にすることによって、会社のあり方に対する考え方やアプローチが180度変わってくるだろう。

自社にとって「成功」が何を意味するのか?それを可視化するのがビジョン・ステートメントである。ビジョン・ステートメントを書くためには、それが「未来のどの時点のことなのか」を明らかに定義することが必要だ。ビジョン・ステートメントは、コア・パーパス、コア・バリューと共に、企業の中核概念をなすフレームワークの大切な一部である。ビジョンが文書化されていれば、会社が何を目指しているのか、会社で働く人皆が共通理解することができる。ビジョン・ステートメントは、向上心旺盛でありながら達成可能であり、現実的でありながら皆の心を奮い立たせるものでなくてはなりません。明確に定義され、文書化されたビジョンなしには、会社が目指す方向から外れているゴールを追うなどの間違いを犯す危険性がある。

以下に、ビジョン・ステートメントの書き方と、それを実践的に会社の経営戦略にどう活かすかについてまとめてみた。

「ビジョン・ステートメントを書く」というのは途方もなく大きな仕事のように思われるかもしれない。しかし、丸一日をワークショップ形式で費やし、ドラフトを仕上げることは可能である。そこから、必要に応じて修正を入れていけばいい。ワークショップの参加者を選ぶ時にはできるだけ多くの人を巻き込むことが好ましいが、あまり人数が多くても脱線してしまう。人数の多さよりも、社内の異なる機能分野から、一定の役職や職種に偏らない幅広い種類の人材を引っ張ってくることが成功の決め手となる。

優れたビジョンの条件
◆心を奮い立たせるものである
◆戦略的に健全である
◆文書化されている
◆社内の皆にコミュニケーションされている

参加が成功の鍵
心からのビジョンをつくるためには、心からの会話が必要だ。ワークショップの前に、参加者に課題を与えるなどといった「準備」はしなくていい。むしろ、フレッシュな気持ちで、先入観のない状態でワークショップに来てもらうこと。気軽でオープンなコミュニケーションと、活発な会話に適したムードづくりができるファシリテーターを選ぶ。

文書化する
ワークショップでフォーカスすべき質問はひとつ。「〇年後に、会社のコア・パーパスやコア・バリューが社内の大多数に浸透し、日々、実践されるようになったら、それはどんな形で表れているか」。

ワークショップ形式でこの質問に答えるには、次の二種類のアプローチがある。

◆「コア・パーパス/コア・バリューが成就した姿」を表すいくつかの質問に皆で答えていく。たとえば「コア・パーパス/コア・バリューが成就した際には、どんな職場になっているか」「具体的にはどんなことが達成されているか」「会社の一員として働くことについて、社員はどんなことを言っているか」「取引先/顧客はどんなことを言っているか」
◆各参加者が15分から20分ほどを費やして、各自「ビジョン・ストーリー」を紙に書き出す。「コア・パーパスとコア・バリューが成就したら、私たちの会社はこうなる」を表現する色鮮やかで具体性に満ちたストーリーを、想像力を働かせて創作する。その後に、数人で構成されるグループか、あるいはペアでそれぞれのストーリーをシェアする。

フィードバックの収集とドラフトの作成
上記いずれのアプローチをとったとしても、肝心なのは皆からのフィードバックを反映させて「ビジョン・ステートメント」のドラフトを作成することだ。これは、ワークショップ後に、多少小さめのワーク・グループが中心になって行われる。社内の異なる部門・部署・チームから代表者が集まって取り組むことが望ましい。ワークショップで上がった声の中から「共通のゴール」を拾い出し、一貫性とまとまりのある文章に書きあげていく。まとまった「文章」が書きあがった時点で、外部の目を取り入れるのもよい。会社のことをよく知っていて、その意見を皆が高く評価している、信頼のおける人物にドラフトを読んでもらって、「どこが魅力的か」「どこがわかりにくいか」「何が欠けているか」など感想を述べてもらう。そのようにして、完成に近づけていく。

ビジョンをもとに、「戦略プラン」を立てる
ビジョンが「目的地」であるとしたなら、「戦略プラン」とはそこに到達するための地図のようなものだ。ビジョンは長期的なものだが、「戦略プラン」はゴール設定しやすいように短期間に細分化できる。例えば、ビジョンが「10年後のビジョン」だとしたら、そこを最終的な到達点として、「向こう3年間の戦略プラン」を立てることができる。

ビジョンを「ビジネス戦略」として実行する
ビジョンを文書化したら、次はビジョンを現実のものにするための実践が始まる。社内のあらゆるレベルでの実践を可能にするためには、次のステップが考えられる。

◆伝える
ビジョンを文書化したら、それをどう社内に「伝える」かも同様に重要だ。ただ「告知」するだけ、壁に「掲示」するだけでは不十分だ。むしろ、「人と人」の会話を通じて社内に浸透しなければならない。会社の集会など、機会があるごとにリーダーがビジョンについて話す、ビジョンについてのストーリーをシェアする。また、社員がそれぞれビジョンについてどんな思いを持っているのか、どんなところに魅力やインスピレーションを感じ、自分はどのようにその実現に関わっていきたいと思っているのか、シェアできる機会を設けることが必要だ。ビジョン実現の鍵は、それが社内で、日々、どのくらい頻繁に語られているかである。

◆会社の制度や業務に反映させる
コア・パーパスやコア・バリューがそうであるように、会社の採用活動や新入社員教育、業務評価、報奨プログラムにも会社のビジョンが反映されるべきだ。各社員と頻繁に面談をし、ビジョンを一行ずつ読みながら、それが何を意味するのか、また、業務のどこに反映されているのかを討議することで、ビジョンの定着や理解を助けることになる。各社員がビジョンと自分とのつながりをどう考えているかを聞き、各々の日々の業務や役割の中で、ビジョンを現実に近づくために何ができるかを話し合う。

◆定期的にビジョンを再確認し、軌道修正する
年に一度は、会社のコア・パーパスやコア・バリューと共に、会社のビジョンを再確認する機会を設けること。会社が定めている短期的なゴールが、長期的なビジョンに沿っているかどうかを見直し、時には軌道修正することも必要になる。

ビジョニング・プロセスは会社全体だけではなく、より小さなスケールでも有効に活用できる。チームのビジョンを定めてもいいし、また、各社員に人材開発の一環として、ビジョニング・エクササイズを課すのもいい。社員が各々のビジョンを描くことのできる会社は強い。会社が社員自身の個人のコア・パーパス、コア・バリュー、そしてビジョンを知っていたなら、社員一人ひとりの人生設計に力を貸すことができる。社員が自己実現できる会社とは、会社のビジョンの実現に向け社員が一丸となる勢いをもった会社でもあるのだ。

*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです

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