本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2017年11月28日)。

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あるスモール・ジャイアンツのコア・バリュー・ストーリー(第一回)

コア・バリュー経営協会では、コア・バリュー経営の実践企業において、社員による「コア・バリュー・ストーリー」が共有されることを奨励しています。しかし、「コア・バリュー・ストーリー」と言われてもいったいどんなものかピンとこない、という皆さんのためにアメリカのスモール・ジャイアンツの例を用意してみました。今回から6回続けてお届けしていきます。
以下は、ペンシルバニア州フィラデルフィアに本社を置くあるデザイン会社の一社員が、コア・バリューのひとつである「卓越を目指そう」について思うところを綴ったものです。このように、各社員が会社のコア・バリューについて「思い入れを語る」ことは、コア・バリュー経営を実践している企業にとって非常にためになる試みだと思います。

私たちのコア・バリュー:卓越を目指そう

誰だって同僚や顧客から100点満点を貰いたいと思っている。でもこの会社では、社員のみんなが、「誰かに褒められる」ことではなく、自分で満足のいく「素晴らしい仕事をする」ことにこだわりを感じている。他者の承認や褒め言葉をもらうことを目的にしているのではなく、常にひとつ上のレベルの仕事をすることに情熱を抱いている。「卓越である」ことに純粋な情熱を感じていて、それを追求しているのだ。

【すべては人から始まる】
こういう人たちばかりを集めてチームをつくるのは容易なことではない。私たちの採用プロセスは極めて手のこんだものだ。まず、「いい」と思う候補者がいたら電話でスクリーニング目的の面接をする。その結果「いける」と思ったら、募集している役職・職種に関連する課題に取り組んでもらう。そして、後日、会社に来てもらって、面談で課題の成果を発表してもらう。成果発表には少なくとも2人の社員が面接官として立ち会い、候補者の仕事を生で観察する。それでまだ「有望」だと判断したら、また別の社員1、2人に参加してもらってランチ面接をすることもある。しかし、必ずしもこの後すぐに採用が決まるわけではない。

すべての役職・職種に関して、空きのあるなしに関わらず面接を継続的に行っている。つまり、欠員を埋める必要性が生じた時には、文化適性が高く、なおかつ優れた技能をもった人材にオファーができるということだ。そして、何カ月もをかけて採用のプロセスを行うため、その人がいよいよ入社するという時には、もう顔見知りのようになっていて「新人」であるという感覚はほとんどない。

【ルーティンでリズムを築く】
私たちの会社の社員は、定期的に同僚との「タッチポイント」をもち、良い仕事をするための十分なサポートを受けられるような仕組みが整っている。

マンツーマン面談
マネージャーは、各チームメンバーと二週間に一度、一時間ずつ面談をもつ。この面談はマネージャーが率先してスケジューリングする。必ず、二週間に一度、週の同じ日の同じ時間に行われるように配慮する。「リズム」を築くためだ。面談では、常に相手の健康状態や仕事に関する悩みごとや問題点がないかどうかをまず聞く。そして、「何か力になれることはないか」と手を差し伸べる。また、現行で取り組んでいるプロジェクトの進捗状況についてレビューしたり、各人が定めているキャリア・ゴールについてディスカッションしたり、その人のことを個人的に知るように努める。

DIGs(ディグズ)
私たちの会社のチームは様々な技能や経験や知識をもった多様性豊かな人材で構成されている。その環境を活かして、プロジェクトに無関係なところでも、協業や共有を奨励している。DIGs(ディグズ)と呼ばれるのは、専門分野に関する知識を深めるためのグループで、各部門(プロジェクト・マネジメント、UXデザイン、ヴィジュアル・デザイン、開発)にひとつずつ存在するが、所属部門に関わらず、誰でも好きなグループに参加することができる。各グループのメンバーはオンラインのコミュニケーション・プラットフォーム上でアイデアを交換したり、質問したりするほか、隔月でランチ・ミーティングを開催し、各自が独自で取り組んでいるプロジェクトの発表をしたり、経験から学んだことを共有したり、最新のトレンドやツールを紹介し合ったりしている。

デザイン・リワインド
年に二回、リード・デザイナーとリーダーシップ・チーム全員が一堂に会し、過去半年に手掛けた仕事をレビューする。各プロジェクトについて完成品を皆で鑑賞するとともに、制作過程での逸話や、チームとクライアントの交流などについて話し、またプロジェクトから得た学びを共有している。こういった「振り返り」の集まりが、社内のシステムやプロセスやリーダーの在り方を見直し、仕事そのものやチーム内の人間関係やクライアントの関係を継続的に改善、向上することに貢献している。

シンクトラスト
プロジェクト・チームを陰で支えるのは、「シンクトラスト」と呼ばれる経験豊かな社員たちで、プロジェクトの遂行期間を通じてインプットを提供する。これは以前から非公式に行われていたことだが、今ではより組織化された公式な取り組みになっている。シンクトラストは、ピクサー社の「ブレイントラスト」にアイデアを得て生まれたものだ。

ビジネス・プラクティスにおける卓越
いかに素晴らしい人材が集まっても、倫理に支えられたビジネス・プラクティスの確かな基盤がなくては、素晴らしい仕事をし続けることはできない。私たちの会社では、毎週、リーダーが集まり、会社の財務状況をレビューしている。また、コアとなる経営陣が毎週金曜日の朝に集まり、社内でのあらゆる問題について討議するようにしている。また、営業と制作チームが共に週に一度の会議で進行中のプロジェクトや社内資源の配分について共通理解を深めるようにしている。

*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです

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