多くの企業は長い間、顧客サービスを「本業を営むためには避けて通ることのできない必要悪であり、コスト・センター(コストを生む場所)である」と考え、顧客サービス業務にかかるコストをできる限り切り詰めることに力を注いできました。そのコスト削減の中核となるのが「自動化」であり、人はマシーンを切り盛りする作業員に過ぎませんでした。創造しようとしているのは「お客様の体験」というコトでありながら、まるでモノを生産する工場のような業務設計がなされていたわけです。

しかし、本質を見極めてみると、顧客サービスというのは、顧客と直に触れ合い、企業やブランドの「顔」を最も効果的に表現する機会であり、クリエイティブ・ワークです。企業から顧客への思いやりの表現なのです。

特に、生活者に選ぶ権利と力があり、売り手にとっては厳しい顧客の取り合いになっている競争の時代に、顧客のロイヤルティを確保することは極めて難しくなっています。そういった中で、唯一無二のサービス体験の提供は、顧客の心を掴む価値創造の絶好の機会であるといえるでしょう。

石塚しのぶ