本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2016年9月28日)。

**********

偉大な文化を築くための10の要素

結束の固い企業文化を築くには、何年にもわたる継続的な努力と一貫した実践が必要になります。以下は、ベリルヘルスの創設者であり、ステリサイクル社のチーフ・カルチャー・オフィサーを務めるポール・スピーゲルマン氏が、「偉大な文化を築くための10の要素」としてまとめたものです。

1. コア・バリュー

かつて私は、コア・バリューについてとてもシニカルだった。壁に掲示しておくために書かれた標語に過ぎないと思っていたのだ。しかし、10年ほど前にベリルで「コア・バリュー」を導入した時、それが、いかに日々の意思決定に役立ち、また、従業員が会議などでそれを引用して活用しているのを見て、考えが変わった。一貫性をもって開発され、伝達され、実践された時に、コア・バリューは組織にとってかけがえのない道しるべとしての効果を発揮するとわかったのだ。コア・バリューとは、会社がその構成員に期待する行動のことだ。今日、ベリルヘルスでは、新入社員は初日からコア・バリューを学ぶ。ただ壁に掲示されているだけではない。大きな集会の時は、必ず、コア・バリューに関するディスカッションで幕を開けるし、毎日のように、従業員がいかにコア・バリューを実践しているか、その逸話を語るようにしている。

2. 仲間意識

仲間意識とは共に楽しむことだ。同僚を「同僚」としてだけではなく、勤務時間外の姿、つまり「全人格」として知ることだ。そのために、ベリルヘルスでは様々な行事を行っている。思い思いの仮装をして出勤する日や、パーティ、ゲーム。また、毎年恒例の行事としては家族ピクニックの日、かくし芸大会、バスケットボール・チャレンジ、秋まつり、クリスマス・パーティがある。これらの行事には従業員だけでなく、彼らの家族も参加する。「ベリル・ライフ」という名前の社内機関紙を隔月で発行しているが、これは従業員の自宅に郵送される。家族ピクニックの日にちなんで、毎年、従業員の子供が参加できるTシャツ・デザイン・コンテストを催している。また、かくし芸大会には、従業員の家族も参加する。

3. お祝い

功績を祝うことは非常に重要だ。それも、CEOがそれを称えるというだけではなく、同僚から賞賛の言葉を聞くことが、どれだけ励みになるか知れない。ベリルでは、「プライド」プログラムという報奨制度があって、これは、ベリルのコア・バリューを実践している従業員を同僚が指名できる制度だ。四半期に一度、この「プライド」賞を受賞した従業員の中から一名、「最優秀賞」を選出するということも行っている。また、仕事上の功績ばかりではなく、従業員の家庭で子供が生まれたり、子供やスポーツ大会で優勝したり、学校を卒業したりした際に、それをお祝いするプログラムもある。

4. 共同体意識

成果を生む企業文化に欠かせないひとつの要素は、地域共同体への貢献だ。ベリル自身は全米の顧客にサービスを提供する全米規模の会社だが、本社が所在するテキサス州ベッドフォードに的を絞り、恵まれない住民を助ける活動を行ってきた。これは、地元の組織を助けるばかりではなく、ベリルの社員にとっても会社への誇りを感じる絶好の機会になっている。

5. 意思疎通

ベリルでは、公式、そして非公式に、会社のあらゆるレベルで常時意思疎通が行われることを奨励している。四半期に一度、全従業員参加が集い、二日にわたって合計6つの集会をこなす「タウンホール・ミーティング」も行っている。ベリルは24時間体制でコールセンターを運営しており、電話での対応を行うことそのものが収入源なので、この「タウンホール・ミーティング」を遂行するにはそれ相応の覚悟と損失を伴うが、それでも行っている。また、一回につき12人から15人の従業員を招待し、CEOである私と一緒にランチを共にする機会を設ける昼食会も行っている。その際、従業員は何でも話題にすることができるし、私に対して、どんな質問でも投げかけることができる。そして、ひと月に一度、私の家族の写真を添えたニュースレターを従業員に送ることにしている。また、「アスク・ポール(ポールに聞いてみよう)」という社内サイトでは、人前では聞きづらいような質問を投稿することができる。私はすべての質問を読み、一つひとつにできる限り答えるようにしている。

6. 思いやり

仕事のことばかりではなく、「人間」としての彼らの生活を気にかけていること。それを従業員に感じてもらう必要がある。そのために、ベリルでは「ベリル・ケアーズ」というプログラムを設けている。社内サイトに、監督者が同僚について、出産やお悔やみやケガ、結婚など特記すべき近況を投稿することができる。投稿があると、CEOである私のところに自動的にメールが送られてきて、それによって、私は、メッセージ・カードを送ったり、電話をしたり、病院にお見舞いに行ったりなど、「気にかけている」ということを表現する行動を状況に応じてとることができる。また、特別な事情で経済的に窮している同僚には会社の基金を通して支援を提供したりもしている。

7. 学びの追求

会社が、従業員一人ひとりの成長を真剣に捉えているということを、従業員に対して表現することが必要だ。これは、小さなことの積み重ねで表現することができる。例えば、社内に「読書クラブ」をつくってもいい。長期的な視野で考えて、オンラインの学習プログラムや管理者養成のための研修プログラムなど、より大がかりなことに発展させていけばいいのだ。

8. 一貫性

文化を創るのは「積み重ね」だ。優れたプログラムやイベントを一度きりで終わらせるのではなく、定期的なものとして続けていくことが必要だ。鳴り物入りで始めても、継続できなければ会社としての真剣さが疑われてしまう。文化が定着するのには年単位の時間がかかるが、従業員が心の底から楽しいと思い、同僚同士が本当に信頼できる職場をつくれるのだから、取り組む価値はある。

9. つながる

経営者は孤立を避けること。社内のあらゆる部署、部門、職種で働く人たちとつながることが大切だ。「こんなことは、自分はやらない」と思っても、あえてやってみること。ベリルでは、一年に一度、クリスマス・パーティの際に上映するジョーク・ビデオを制作していたが、その中でお世辞にもかっこいいとは言えないようや役割を演じるのはきまって私の仕事だった。もし、仮装デーや卓球大会があれば、私も参加する。笑いも涙も、従業員と共にする。

10. 歴史を語り継ぐ

会社がどんな経緯で創設されたか、また、創設者が、どんな苦労をして事業の基盤を築いてきたか、すべての従業員に語り継ぐこと。人間誰しも、何か特別で、ユニークな歴史の一部でありたいと思っている。新入社員を、会社の歴史を表す逸話で迎えること。そして、今日ある文化や戦略の発端となった逸話を語り継ぐことが必要。

(注:この記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティのサイトに掲載されたポール・スピーゲルマン氏の記事をもとに、ダイナ・サーチの見解や解釈を踏まえて加筆・編集を加えたものです)

コア・バリュー経営協会の会員についての詳細はコチラ