戦略的企業文化の構築は組織の民主化

コア・バリューが市民権を得始めている。アメリカのビジネス界では、特にネット関連のスタートアップの会社などでは、コア・バリューを定め、それを中核に据えて組織の経営・運営を行っていくことがあたりまえのようになってきている。

文化はどんな組織にもあるが、自然発生的に「できた」ものではなく、意図的に「つくる」文化のことを「戦略的企業文化」と呼んでいる。

企業文化とは、組織内の大多数によって共有され、当然視されている価値観、信条、あり方であり、企業の「個性」である。だから、どんなに立派な理念や使命を社長さんが掲げても、会社の大多数がそれに賛同しなければ意味はない。戦略的な企業文化を構築するためには、企業組織を民主化し、「やらせる」のではなく、「みんなでやる」、あるいは、社員が自発的に「やりたい」「参加したい」と思うような活動をしなくてはならない。

社員を「お触れに従わせる」のではなく、使命や価値観に納得し、賛同してもらうことができれば、会社が劇的に変わる。社員全員が同じ価値観を共有し、自分の意思で会社の運営に参加するようになれば、個々の社員の中の「自分の会社」という意識が高まり、より大きな熱意と責任感でもって会社の課題に取り組むようになるだろう。

「戦略的な企業文化」は、やる気にあふれる職場と生産性の高い組織を築く上での土台となるものだ。

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企業文化は百社百様

企業文化というのは、個々の会社にとって独自のものである。言い換えれば、「独自」であるからこそ意味がある。サービス業には、サービス業にふさわしい文化があるが、だからといって、サービス業を営む会社が必ずしも同じ文化をもつとは限らない。また、同じ価値観(の言葉)をもつ企業でも、それが同じような文化に表現されるとは限らない。

たとえばネット通販のザッポスは、「楽しさとちょっと変わったことを創造せよ」というコア・バリューをもち、個性の尊重をその価値観のひとつに挙げている。その表現として、年に一回、有志社員が頭を丸刈りにするイベントをやったりしている。しかし、当然ながら、「個性の尊重」を価値観に掲げるすべての会社が同じようなイベントをやるわけではないし、それは適切であるとはいえない。

優れた企業文化をもつ会社から「学ぶ」ということは、その会社のやることすべてを「真似する」ということではない。ザッポスのやっていることを真似たからといって、ザッポスのような素晴らしい顧客サービスが提供できるわけでも、ザッポスのように熱烈な社員/顧客ロイヤルティが得られるわけでもない。肝心なのは、「やっていること」の背景にある「考え方」や「目的意思」を学ぶことだ。「何をやるか」は、各会社が自らの感性を重視しつつ、独自につくりあげていくべきだろう。

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「ふさわしい」企業文化をつくる

様々な企業文化を分析していくと、業種や、その会社がどんな「使命」を掲げているかによって、「ふさわしい企業文化」のタイプが異なることがわかる。戦略的な企業文化を構築するにあたって、自社の使命の実現には「どんな企業文化がふさわしいのか」を考えることが必要になる。ここでは、参考までにいくつか代表的な「企業文化のタイプ」を挙げる。

まず、「家族文化」は、文字通り、家族意識や仲間意識が強く、柔軟性や自律性などの価値観を重んじる文化である。

また、製造業界やIT業界に多いのは「イノベーション文化」である。その名のとおり、革新、起業家精神、創造性などの価値観を重んじる。

セールスやマーケティングを強みにしている企業に多いのは、「競争に勝つ」ことや、「一番になる」ことに価値を見いだす「市場競争文化」だ。また、お役所などによく見られるのが「官僚文化」で、なにより安定性や効率などの価値観を重んじる。

ホスピタリティ業界や小売業界などの「サービス業」に多いのが「サービス文化」だ。「奉仕の精神」を重んじ、「優れた顧客サービス」を掲げるだけでなく、社内での助け合いや思いやりの精神を重視する。そのほかにも、パタゴニアを代表格とする「社会貢献文化」もある。社会に対する価値創造に焦点を置き、共通の目標とともに、会社の従業員が顧客やパートナー企業と協業して成果を上げることを目指す。

成熟期に達した企業は、どうしても安定や効率を重んじ、「官僚文化」に傾く傾向にあるが、今日の変化や競争の激しい市場においては、成熟企業であっても、「家族文化」や「イノベーション文化」の要素が必要不可欠である。厳しい時代を乗り切るためには、「家族のような密接なつながり」や「絶えず革新し続ける精神」が要求されるからである。

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今ある価値観の「あぶりだし」

会社のビジョンや使命をまっとうするためには、それにふさわしい企業文化がなくてはならない。そこで、戦略的企業文化構築の第一歩は、自社の今ある文化の実情を把握することである。

企業の文化の根底にあるのは、社内の大多数が共有する「価値観」である。そこで、社内の目立った「価値観」をあぶり出す活動をする。

ひとつの方法は、「目に見えるもの」を観察することである。オフィス環境、壁の上の掲示、社員たちの服装など、目に見えるものはすべて価値観の反映だといえる。

もうひとつは、「創業者や経営者が掲げるビジョンや使命」を吟味することである。ビジョンや使命には創業者や経営者の想いが凝縮されており、多くの場合、それが社内の価値観に色濃く影響している。

そして最後に、働く人たちの声を聴いて、「社内の大多数によって共有されている暗黙の価値観」を特定する方法もある。価値観というのは、無意識のうちに言動に反映されているもので、働く人自身も即答できないことが多い。アンケートやインタビューなど、ありとあらゆる手段を用いて、社員の考えを引き出すことが必要である。

いずれにせよ、コア・バリュー経営に着手する企業の皆さんには、社内で、企業文化に対する「感度」を高める活動や練習を行うことをお勧めする。たとえば、自分の行きつけの(お気に入りの)店や、反対に「二度と行かない」と思う店について、その「企業文化」を分析してみるなど、ゲームやチャット形式で気軽に行うことで、「企業文化」を考える脳が養われる。

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企業文化は「社内だけ」のものにあらず

会社の事業は、その会社の力だけで成り立つものではない。たとえば製造業の場合、資材やパーツを提供したり、完成品を運んだり、販売したりしてくれる「パートナー」の存在があってはじめて事業活動が成立する。

各パートナーの働きが、最終消費者に与える商品・サービス体験、ブランド体験を大きく左右する。従って、コア・バリュー経営の実践には、「パートナー企業との価値観の共有」が必要になってくる。

たとえば、パタゴニアのように「ビジネスを通して環境問題への解決策を実践する」ことを使命として、「自然環境を守る」ことを価値観としている会社が、環境問題には一切関心がない、利益のためなら何でもやる、というような仕入先から資材を仕入れたらどうなるか。パタゴニアが掲げる使命の実現はあり得ないことになるだろう。だから、同じ目的を共有し、共通の価値観をもつ会社と取引することは、企業にとって極めて重要なことなのだ。

自社の「コア・バリュー(中核となる価値観)」を定めて、それを公にすることは、パートナー選びをする上での有効なリトマス・テストになる。「世のため、人のためになるコンシャス(意識の高い)企業から買いたい」と望む生活者がますます増えている中、企業が自らの使命を世に宣言し、筋の通った行いをしていくことは極めて大切なことだ。

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