人間は向上を目指す生き物である:スキル認定の仕組み

初めてザッポスを訪れ、コンタクトセンターの人たちとテーブルを囲んで交流会を行った時、まず、目に入ってきたのは彼らが首からかけているいくつものバッジでした。

どこかの部族の首飾りを思わせるバッジが、社員の人たちにとって並々ならぬ「誇り」の象徴であることは一目瞭然でした。

何のバッジかと尋ねると、コンタクトセンターでチームリーダーを務めているという恰幅の良い青年は、胸を張り、バッジで飾られた紐を手にかけて私によく見えるよう前に突き出すと、こう教えてくれました。

「スキル・セットといってね、コンタクトセンターで必要なスキルをひとつ学ぶたびに、バッジがひとつずつ増えていくんだ」

ザッポスでは、メールでの対応、チャットでの対応、ツイッターでの対応など、コンタクトセンター業務においてレベルアップするために必要とされるスキルを定義し、各スキルについて認定プログラムを設けていたのです。

指定のクラスに出席する、課題図書を読んでレポートを提出するなど、スキルによって履修内容は異なりますが、課題をこなし試験にパスすれば認定が与えられます。その認定の証がバッジであるというわけです。

認定を受けると、基本的な顧客の問い合わせ電話対応に加えて、そのスキルと連動した業務を任されるようになります。そして、習得したスキルの内容に伴って、時給25セント、あるいは50セントというように、大きな金額ではありませんがお給料も上がっていくという仕組みです。

時給が上がるというのはありがたいことではあるけれど、大多数の人はお金を目当てにスキルを学ぶわけではない。むしろ、学べる、成長できる、自分のキャリアにおいてレベルアップできる、それによって得られる達成感自体が何よりのご褒美なのだ、と先のチームリーダーは付け加えていました。

人は皆、常に向上したい、自分にとって意義あること、価値あることについて極めたいと思っているもの。アメリカではコンタクトセンターの仕事は、一般に「他にもっと良い仕事が見つかるまでの腰掛」「昇進・昇給の見込みのない行き止まりの仕事」と考えられがちです。キャリアにおいても、またパーソナルな面においても、常に学び、向上できる機会を「仕組み」として社員に提供するザッポスの「スキル・セット」のプログラムは、ザッポスのコンタクトセンターに特徴的な誇りと活気、プロ意識を創り出す源泉なのでした。

石塚しのぶ