危機を乗り切る「レジリエント」な組織の特徴とは?と考えてみると、2008年のリーマン・ショックから学んだ教訓が思い出されます。

まず、「レジリエントな」組織とは、「結束の固い」組織です。

そして、「結束の固さ」は何によってもたらされるかというと、ずばり、「組織とそれに属する人たち」、そして、「組織の中の人と人」の間に存在する「信頼」です。

ただし、有事の時に効果を発揮する「信頼」は、一朝一夕にして築けるものではありません。それは現場の人間関係のいわば「楔(くさび)」の役割を果たす、皆さんリーダーの日ごろの言動の積み重ねによって築かれていくものなのです。

今、世界中を襲っている「コロナ・クライシス」の只中で、リーダーの皆さん(特に中小企業の)はその大きな衝撃の予兆を肌で感じておられることと思います。ここで、組織としてどう振る舞うことができるかで回復時に大きな差が出てきます。

先行きの不安や混乱に直面した時に、「組織としてどう生き残るか/この危機をどう切り抜けるか」とコミュニティ(共同体)志向に転換できる企業が、回復時にいち早く立ち直れる企業なのです。

会社という組織をひとつの「オーガニズム(生命体)」と考えて、そこに属する人たちが一丸となってどうやって一緒に生き残れるか、そこを出発点として、助け合いのムードをつくっていくことが必要不可欠です。

まず、厳しい状況の中でも、働く人同士が「がんばろう」と常に声を掛け合えられる組織であることが重要です。

また、お互いを「思いやる」心と、それに伴うちょっとした行動が重要になってきます。ストレスを感じている、あるいは、心配事を抱えているような同僚がいたら、悩みや愚痴を聞いてあげる。職場の雰囲気が少しでも明るくなるように大きな声であいさつをしたり、つとめて笑顔で接したりといった気配りをする。時間や心に余裕のない人とは、仕事を分け合ったり、物資を分け合ったりする・・・。具体的な行動は様々だと思うのですが、ようは、会社に属する一人ひとりが「自分には仲間がいる」「自分は支えられている」と実感できるような環境をつくることが必要なのです。

そして、長期的な視野で見た場合に、会社の大多数が「目的意識」や「使命」を共有できていること。「レジリエントな組織」は、「夢のある組織」です。

「ただの仕事」をして、「お給料をもらいにくる」人たちばかりが集まっている組織は、危機的状況に直面した時にその脆弱性が瞬く間に露見します。会社と人、人と人を結びつけるものがないので、簡単に分裂してしまいます。

もちろん、仕事への代償をもらうのは誰にとっても大切なことですが、それを超える「何か」がないと、瀬戸際に立たされた時に踏ん張る気にはなれませんし、先のことを考える意欲など生まれません。

一方で、「日々の業務や売上・利益の損得勘定を超えた大義名分」があり、それが社内の大多数によって熱烈に支持されている会社は、非常時に圧倒的な強さを発揮することができます。

たとえば、ただ「食品を製造している」ではなく、「健康な食卓を支えている」仕事をしているのだと心から信じ、その使命遂行に対する情熱を燃やす人たちが働いている会社なら、各自が創造力を働かせ、知恵や力を持ち寄って危機を乗り越えることができるでしょう。

大きな会社なら「規模」が担保となって生き延びれるかもしれませんが、中小の会社では、従業員全員の協力なくしては荒波を乗り切れません。船乗りの言葉で、乗組員に一人残らず、位置につけ!と呼びかける時、「All hands on deck(オール・ハンズ・オン・デック)」と掛け声をかけますが、今はまさにそういった時なのです。

しかし、冒頭に述べたように、高いレベルの結束は一夜にして成るものではありません。常日頃から、「コア・パーパス(会社の目的・使命)」や「コア・バリュー(会社の皆で共有したい価値観)」を組織の中核に据えて、皆の心をひとつに束ね、足並みを揃える訓練をしておくことが必要です。

コロナ・クライシスはいわば警笛のようなもので、今後は私たちの常識を覆し、社会通念を根底から揺すぶるような出来事が次々と起こるかもしれません。変化も「加速する」どころではなく、組織も人も、即座に「変わる」ことを迫られるようになるでしょう。

そんな容赦ない時代には、芯から強靭な組織を育む必要があります。今まで以上に、リーダーの役割が問われてきます。まず、皆さんが発信源となって掛け声をかけ、日々ともに働いているチーム内の結束を再確認する。それをはじめの一歩としてはどうでしょうか。

記事/ダイナ・サーチ、インク 石塚しのぶ