「やらされている」のではなく、「やりたいからやる」ことのパワー

ザッポスを初めて訪問したとき、私の心に何よりも強い印象を残したのは、コンタクトセンターで働く人たちの自信と誇りに満ち溢れた姿でした。

ただ電話を取るのが自分の仕事ではない。顧客にハッピーを届けること、そしてそれは世の中を良くする重要な仕事だ、ということを一人残らず全員が理解している、ということはコンタクトセンター内の空気からも明白でした。

また、テキサス州ダラスの郊外にある医療コンタクトセンターの会社、ベリルでも同じ空気を感じました。

ベリルの共同創設者兼元CEOのポール・スピーゲルマン氏はこう語ります。「コンタクトセンターと聞いて人が真っ先に思い浮かべるのはロウ・ペイ(低賃金)、ロウ・モラール(やる気の欠如)、ハイ・ターンオーバ―(高離職率)の三拍子。一般に『ハッピーな職場』ではないはずなのに、ベリルを訪問する人の口を決まって突いて出る質問は『なぜ、皆微笑んでいるのですか』というものです」

なぜ、ザッポスのコンタクトセンターの人たちはあんなにハッピーそうなのでしょうか。また、ベリルの人たちは皆なぜ。微笑んでいるのでしょうか。

それは、ザッポスもベリルも、働く人が心からやりたいと思うことを、自分の裁量でやっているからだと思います。

ザッポスもベリルも、人間の本性は基本的に善であるとする「性善説」に立っています。誰でも、人を幸せにすること、。人を喜ばせることをすることに喜びを見いだすものだ。だから、会社はできるだけその邪魔をしないようにする、それがザッポスやベリルの考え方なのです。

もちろん、ザッポスは「WOW(驚嘆)のサービス」、ベリルは「ケア(思いやり)」について特に優れた資質を備えた人を採用の段階で厳選していることは言うまでもありません。

「WOW(驚嘆)のサービス」「ケア(思いやり)」など会社によって異なりますが、会社が最も大事と思う価値観を掲げ、それに沿って筋が通っているという条件で、個々の従業員に自分で考え、行動する自由を与える、それがコア・バリュー実践企業のひとつの共通点でもあります。会社に全面的に信頼されている、「顧客接点」という最も重要な仕事を任されている、そして、自分の判断を会社が支持してくれている。そういった確信が従業員に自信と安らぎを与え、より良い仕事をしようというやる気と責任感を掻き立てるのです。