本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2016年12月19日)。

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愛とリーダーシップの関連性

「愛」と「リーダーシップ」なんて、到底かけ離れたふたつのことだと感じるかもしれません。気恥ずかしくさえ思うかもしれません。しかし、昨今の米国ビジネス界では、「愛」が優れたリーダーシップの主要素として論じられるようになってきています。

ここでは、「愛」の構成要素として、「親密さ、情熱、献身」の三つを定義しています。以下に記すのは、職場における「愛とリーダーシップの関連性」を、「親密さ、情熱、献身」の三つの角度から事例に基づいて分析したものです。

親密さに勝るものはない
親密さ:チームメンバーの仕事やそれ以外の生活について、自然かつお仕着せでないやり方で関心をもち、働きかけること

「親密さ、情熱、献身」。愛の構成要素として定義された三つの要素の中で、リーダーシップに最も大きな影響を与えるのは「親密さ」であるといいます。

親密さに勝るものはない。それはなぜかというと、親密さこそが、情熱と献身の土台だからです。親密な関係を築くためには、それなりの時間や感情や労力の投資が必要になりますが、そういった『投資』が自ずと情熱や献身の表現となるからです。

職場で親密さを育むには、例えば社員の机に飾ってある家族の写真について尋ねたり、誕生日など重要な日を覚えていてメッセージ・カードを送ったりなど、シンプルな行動の積み重ねが必要になります。

ミシガン州にあるITサービスの会社では、まず、社員一人ひとりの「個人的なゴール」を学び、会社がその実現を全面的に支援することを表現することから始めます。それが親密さを育むうえでの土台となっています。例えば、子供のスポーツの試合の応援に行くことが重要、と定めた社員がいたとしたなら、その社員が試合の観戦に行けるように、直属の上司は全力を尽くします。また、この会社では、もっと大きな目標、例えば、マイホームを買うために貯金をしたい、あるいは不動産のことについて学びたい、ローンを組みたいなどという人がいたら、上司はそういう大きな目標の実現にも手を貸すようにしています。

この会社のビジョンはなんと、「従業員の個人/キャリア/金銭的ゴールの実現をサポートする」こと。PCの故障を修繕したり、ITシステムのメンテナンスをしたり・・・などといった「業務」は、会社を持続させる必要条件ではあるけれども、従業員の人生の目標達成の手段にすぎないと位置づけているのです。

仕事への情熱
情熱:仕事に注ぐ前向きなエネルギー。日々、挑戦し、人と交わり、会社の使命を伝えていくうえでの熱意。

『どんな会社で働いているか』『どんな仕事をしているか』と人に尋ねてみましょう。その質問に答える姿勢や表情を観察すると、最初の10秒間でその人の情熱のほどを察知することができます。そして、情熱と前向きな姿勢は伝染するものなのです。

チームの成功は、それに関わる人たちの「前向きなエネルギー」にかかっているといいます。先述のITサービスの会社では、リーダーの資質は「サービスにかける情熱」であると考えているそうです。

「我々の会社の『スター社員』とは、自分の仕事を完璧にこなし素晴らしい成果を上げるだけではなく、周囲の人を奮い立たせて、皆が素晴らしい成果を上げられるような、そんな環境をつくる力を持った人たちのことです」とこの会社のCEOは語ります。

サービスへの情熱が周りの人にも伝染し、その成功をサポートする。愛がリーダーシップの主要素であることはここにも表れています。

仲間、そして崇高な使命への献身
献身:他者の幸福や共通の目的の実現に心身を捧げること
他者の幸福と成長に献身するには、ある程度の「親密さ」がなくては成り立ちません。その人のことをどれだけよく知っているか、そして、それだけではなく、その人のゴールの実現をサポートする「意図的な行動」も必要になります。

「他者の幸福に献身している『つもり』でも、その実、その当人にとってほんとうに何が必要なのかを理解していない。リーダーが犯しやすい過ちです。他者の成長を第一に考えることによって、この過ちを避けることができます」と、前述のCEOは語ります。

このITサービス会社では、あらゆる場面を「成長の機会」と捉えて、従業員に「答え」を与えるのではなく、コーチングを通して「気づき」を与えることに焦点を置いています。

「どうすればいいですか」と質問されてもすぐに答えるのではなく、質問で返します。「どうしたらいいと思う?どんな選択肢があるだろうか?どのようにアプローチすべきだろうか?」解決策を与えるのではなく、「解決策を捻出できる人」を育てることに情熱を注ぐことで、周囲の人が仕事に対してもつ情熱に火をつけることができるといいます。

また、優れたリーダーとは、日々の業務とより大きな崇高な目標との「関連性」を気づかせることができる人であるそうです。個人の日々の仕事が、会社全体の目標の達成にどう貢献しているか、気づくことで「やりがい」が育ちます。

この会社には全社的目標から部門・部署の目標を、そして、部門・部署の目標に基づいて個人の目標を導き出す仕組みがあり、各従業員は、この仕組みに従って自らの目標を策定します。個々の従業員が定める目標が、どのようにチームに貢献するのか、そしてひいては全社的な目標の達成に貢献するのかが明確にわかるようになっています。ですから、会社の皆が目標について明確な理解をし、より大きな目標の達成に貢献しているのだという実感をもって働くことができるようになっています。

リーダーは何をすべきか
「愛」はリーダーシップの主要素のひとつである。それを踏まえて、リーダーはいったいどのような行動をとるべきでしょうか。
〇チーム・メンバー(やその家族)のことを心から気にかけ、知るように努力する
〇仕事に対して情熱をもち、それを行動で示す
〇チームメンバーの幸福や成長の実現に向けて、「意図的な行動」をとる

これらの行動を通して、チームの中に揺るぎない信頼を築くことができるでしょう。仕事面でも人格面でも『頼りになるリーダー』としての信頼を築くことができれば、いかなるストレスにも打ち克つ「強いチーム」をつくることができるといえます。

(注:この記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです)

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