本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2018年12月21日)。
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コア・バリューを毎日の行動に息づかせる方法
「コア・バリューを生きる」とはいったいどういうことだろうか。
C社は家具のメーカーだが、この会社のドアをくぐったとたん、「コア・バリュー」の存在を感じることができる。コア・バリューを体現する社員を表彰する壁の掲示がすぐそこにある。C社では社員同士が、毎日のようにコア・バリューを巡るお互いの成果を称え、祝福しているのだ。コア・バリューが単なる「標語」に終わっていない会社では、コア・バリューが社員の毎日の行動に、意思決定に息づいている。そしてそれが会社の血となり肉となると、そういった貢献を毎日のように祝福しあう文化が確立されるのだ。
C社はミシガン州グランド・ラピッズに本社を置く。C社はコア・バリューに基づいてつくられた会社であり、トップ自ら、コア・バリューを体現する社員たちを称え、表彰するようにしている。C社は大きくなることよりも「偉大になること」を目指す、「スモール・ジャイアンツ」と呼ばれるムーブメントの一端も担っている。
今日は、コア・バリューを会社の毎日の行動に息づかせるために、C社が実践している方法をいくつか見ていこう。
ディスカバリー:発見
今あるコア・バリューに落ち着くまでに、C社ではコア・バリューの見直しを何度も繰り返し行ってきた。共同創設者が草案したコア・バリュー原案は12のコア・バリューから成るものだった。また、130頁からなる「戦略プラン」も存在したが、それは誰の目にも触れることなく棚の上で埃をかぶっていた。これではいけないと、二人の創設者はその膨大な戦略プランを破棄し、考え直すことにした。代わりに、わずか1頁の戦略プランを書き上げ、12あったコア・バリューを3つに絞り込んだ。
すべての社員が日々の会社の業務、そして自分たちの生活に役立てることのできるシンプルなコア・バリューを望んだ、その結果だった。C社の存在のキーとなる概念を煮詰めたものである。その三つのコア・バリューとは、
1.より良い方法を探そう
2.最高を目指そう
3.正しいことをしよう
である。
コア・バリューを策定、あるいは改訂する際には、できるだけシンプルさを重視したほうがいい、とC社の共同創設者は勧める。そして、一つひとつのコア・バリューがいったい何を意味するのか、それを説明する文書をつくること。そして、戦略プランを遂行するうえで、コア・バリューがどのように役立つかを明確にすること。「簡潔に」「心からの言葉を使う」「記憶に残るものにする」、この三つが彼のアドバイスだ。
システマイズ:仕組み化する
コア・バリューができたら、実践しやすい仕組みをつくる。C社では戦略プランを「MAP(地図)」と呼んでいるが、社内の目につくところには必ずMAPが貼ってある。会社が目指す最高峰のゴールと、それに到達するまでの道筋をレイアウトしたものだ。MAPの中で最も重要な要素が「カルチャー・ピラミッド」で、そこに三つのコア・バリューがリストされている。
MAPの中には、C社の企業文化、コア・パーパス、目指す方向性、そして成功の指標が明記されている。コア・バリューはシンプルであるべきだが、MAPは会社が何を目指しているのか、そしてそこにどうやって到達するつもりなのかを詳細に明示するものだ。
MAPを作成する際には、「やること」だけでなく、「やらないこと」も定義する。MAPは全社員が「会社は何を優先に考えているのか」「何を大切にしているのか」「どこに向かっているのか」を理解するためのガイドだ。今年、最も達成したいことは何なのか。どんな短期的目標が目前に迫っているのか。コア・バリューを戦略プランに反映させることによって、会社のアイデンティティや、方針や、未来に向けてのビジョンの関わりあいを把握することができる。
コア・バリューを生きる
コア・バリューが生活の一部になっている会社では、日々の会話の中でコア・バリューが聞かれるはずだ。コア・バリューを浸透させる方法のひとつに、コア・バリューを体現している社員たちを称賛・承認するプログラムの運営がある。功績を認め、それに報い、そのサイクルを繰り返すことによって、社内にお手本を増殖し、コア・バリューを実践する人たちの輪を広げていくのだ。C社では、四半期に一度、各コア・バリューにちなんだ表彰プログラムを実施している。
<より良い方法を探そう>
コア・バリューのごとく、より良い方法を探した社員に与えられる賞。有志社員が、コスト削減、投資リターンの向上、企業文化の強化、プロセス改善など社内のあらゆる課題に関して「より良い方法」のアイデアを会社に提出する。毎四半期に100から200の応募があるが、応募者すべてに功労賞として25ドルの「社内通貨」が進呈され、これは会社のグッズに交換可能である。毎四半期に、最も優れたアイデアを提出した人に2,500ドル(25万円)、そして年間を通じて最も優れたアイデアを提出した人には10,000ドル(100万円)の賞金が与えられる。この賞は、役職や職種に関わらず、常に「より良い方法を探す」ことを社員全員に奨励するためのものである。
<最高を目指そう>
この賞は、期待をはるかに超える仕事をすることにより、「最高を目指そう」というコア・バリューを体現した人に贈られる。毎四半期、前期の受賞者が今期の受賞者を指名し、受賞トロフィーを引き継ぐセレモニーが行われる。受賞者にはトロフィーの他に一週間の有給休暇が与えられる。
<正しいことをしよう>
この賞は職場、あるいは自らのプライベートな生活の場面で正しいことをした社員に贈られる。毎四半期、すべての社員が「誰かを助ける、あるいはサポートするために、無私無欲の行動をした人」をノミネートすることができる。ノミネートした人には25ドルの社内通貨、ノミネートされた人には100ドル、そして受賞者には1,500ドルの現金が贈られる。対象となる「善行」は会社に関係したこととは限らない。心臓発作を起こした人に救命処置を施した人、一年間里子を引き取った人など、会社とは無関係な、まったくプライベートな行いに対して受賞した人たちもいる。
社員の功績を称え、表彰することはどんなインパクトをもたらすだろう。「最高を目指そう」の受賞者の言葉を借りれば、次のようなものになる。「自分が賞をもらうことはもちろん誇らしいことだったけれども、それ以上に誇らしかったのは、期待以上の仕事をしようという志をもった仲間を祝福する機会を与えられたことでした」。人に認められる喜び、また認め合い、その喜びを分かち合う喜びが社内の結束を固め、「会社」という共同体としての誇りの育成につながっているということだろうか。
*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです
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