本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2018年6月29日)。

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「地域社会とのつながり」がなぜスモール・ジャイアンツに重要なのか

スモール・ジャイアンツには六つの共通項がある。「目的(コア・パーパス)」が明確であること。明確なビジョンをもったリーダーシップ。全人的なアプローチを大事にする企業文化。健全な財務。社員/顧客/仕入先との密接なつながり。そして地域社会とのつながりである。ビジネスの世界で、優れた企業文化やリーダーシップは話題に上ることが多いけれども、その一方で、なぜ「地域社会とのつながり」が偉大な会社を築くのに貢献するのかについてはあまり説明されていない。

企業が地域社会に「還元」するのは一般的に良いこととされているが、スモール・ジャイアンツは地域社会とより深いつながりを築く意識的な努力をしている。なぜ、地域社会とのつながりが重要なのか、従業員エンゲージメントの向上にそれがどう貢献するのか、地域社会とのつながりや、それに対する関心を社内でどのように育んでいったらよいのか、この記事はそれらについて解説するものである。

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地域社会とのつながりがなぜスモール・ジャイアンツに重要なのか
目的、価値観、そしてビジョンといったものを優先的に考えることにより、スモール・ジャイアンツは、大企業や大きくなることだけにこだわる企業が得られないチャンスを手にすることができる。それは、地域社会に対し、偉大かつユニークな貢献をすることだ。スモール・ジャイアンツは、地域社会と相互的なつながりを築いている。つまり、地域社会の性質がスモール・ジャイアンツ自体の性質にも反映され、また、スモール・ジャイアンツが、地域社会の暮らしにおいて、重要な役割を果たすのだ。

企業が「大きくなること」だけにこだわるのではなく、より意義深いゴールを優先した時に、魂のこもった会社を築くことができる。それは、地域社会と密接につながり、共に繁栄する会社である。スモール・ジャイアンツが地域社会と築くつながりは、多面的で、創造的で、そしてそれに関わるすべての人にとって極めて有意義なものである。

地域社会とのつながりが従業員エンゲージメントにどう影響するのか
地域社会に根をはった会社というのは、地域社会と密接なつながりを育み、それが会社にとって、従業員にとって、そして地域社会に多大なメリットを与えるものだ。会社が地域社会との間に築くつながりというのは、顧客や従業員とのつながりとも重なる傾向にある。有能な人材を確保すること、新しい顧客を獲得すること、また、会社運営における解決策を見つけること。課題は何であれ、地域社会との密接な関わりが、それらの課題にポジティブな影響を与えることがよくある。

なかでも、地域社会と堅固なつながりを築くことは、従業員エンゲージメントの育成にも貢献する。従業員もまた、地域社会の一員であるからだ。そして、地域社会に貢献する会社に働くことは、やる気の向上にもつながるし、従業員にとって仕事への活力を与えてくれることでもある。ノースウェスタン大学の研究によれば、地域社会にとって「良い行い」をしている会社ほど、従業員のエンゲージメントが高いことがわかっている。それも、従業員が自ら活動できる機会を与えることが、より高いエンゲージメントにつながる。

スモール・ジャイアンツは一般的に言われるところの寄付などの「企業市民」としての活動に留まることなく、各従業員が自分の采配で良き隣人として、良き行いをし、地域社会の活動の中に会社を巻き込むことのできる力を与えるという哲学に基づいている。それがどんな成果をもたらしているかというと、会社の成功を我が事として真剣に考える、忠誠心の厚く、エンゲージメントの高い従業員の育成である。

地域社会とのつながりをいかに育むか
ほとんどの組織が、もう既に何らかの形で、「地域社会への還元」を実践しているだろう。一歩先に進んで、従業員と地域社会との「関わりあい」を深める新しいイニシアチブで地域に対する会社の献身を「仕組み」として表現してみよう。いくつかの例を次に挙げる。

【有給ボランティア・デイ・プログラム】
有給休暇制度の一環として、「有給ボランティア・デイ」を設けよう。会社が、従業員が共にボランティアに参加できる機会を設けるのもよいし、各従業員が自分にあったボランティア機会を探すよう奨励するのもよい。従業員を巻き込むのが難しければ、従業員の中から「コミュニティ・チャンピオン」を任命しよう。ボランティア活動に情熱を抱く従業員に手を挙げてもらってお世話役になってもらうのだ。「病気の子供を対象にしたチャリティ」「高齢者関連のボランティア」「自然保護のボランティア」などトピックごとに「チャンピオン」を任命するといいだろう。各チャンピオンがボランティア機会を探してきて社内に掲示したり、従業員が共にボランティアできるイベントを立ち上げて人を募ったり活動することができる。

【ボランティア体験を共有するソーシャル・プラットフォームをつくる】
メール、朝礼、オフィス内の掲示板など、デジタル、アナログいずれでもよい。従業員がボランティア体験を共有できる「場(プラットフォーム)」をつくる。体験を共有する場を設けることにより、従業員がどんな問題や課題やトピックに関心を持っているのか発見することができるし、チーム間のつながりを育むのにもつながる。

【寄付のマッチングをする】
年間を通じて、従業員がそれぞれ、自分が気にかけている非営利組織に個人的に寄付をしているケースがある。各従業員が寄付するのと同額を会社から寄付する「マッチング」プログラムを立ち上げて、会社が従業員一人ひとりに関心をもち、個々の情熱を支援する姿勢を表現し、従業員とのつながりを深めるきっかけにしよう。

【地域社会のイベントに会社の施設を開放する】
地域の非営利やその他の団体のイベントや会合に会社の施設を提供しよう。そうすることによって、地域のあらゆる団体やそのメンバーとの関係を築き、地域社会とのつながりを強めることができる。

【コミュニティとの関わりを測定する指標を設ける】
手始めとして従業員の体験談を集めるのはいいアイデアだが、コミュニティ活動の成果を測定する方法は他にもある。コミュニティ活動のビジョンを文書にして、何をもって「成功」とするかを定義する指標を設けよう。「従業員が何人くらい参加したら成功なのか」「会社全体の累積として何時間をボランティア活動に寄付するか」「金額にしてどのくらいの寄付が集まれば成功なのか」など数値化できる指標が望ましい。成功の指標を定めて、それをどう達成するか戦略を定めよう。

*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです

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