本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2019年6月28日)。

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コア・パーパスが息づく会社をつくるには:その方策(前半)

皆さんの会社では、コア・パーパスの威力が十分に発揮されているだろうか。コア・パーパスは社員のモチベーションやエンゲージメントを高め、会社のパフォーマンスを向上させるうえでの起爆剤になり得る。

昨今のビジネス界では、「パーパス」がちょっとした流行り言葉のようになっている。しかし、コア・パーパスはただの標語ではなく、実質的な効果を会社にもたらすものだ。明確なコア・パーパスをもつ会社は、業務やサービスの質においてそれをもたない会社をはるかにしのぐばかりではなく、よりハッピーでよりエンゲージメントの高い社員を生み出す。しかし、「定義すればよい」というものでもない。会社ぐるみで、コア・パーパスを日々実践していくための努力が必要だ。

以下に、コア・パーパスが「息づく」会社をつくるためのいくつかの方策について解説する。

なぜ、コア・パーパスが必要なのか
コア・パーパスが必要なのは会社に限ったことではない。人を考えてみても、「目的意識」こそが人を支えるものである。人は誰でも「生きる目的」が必要だ。そして職場でも、仕事に「目的」を感じることができれば、人は優れた結果を出すものだ。昨今では、会社が売上や利益を超えた、社会に貢献する目的を持つことが求められるようになってきている。そればかりではなく、明確な目的意識をもつ会社ほど、ビジネス的にも高い成果をあげるものだ。

コア・パーパスが生産性やエンゲージメントを高めるのはなぜだろう。社員の鼻先に「ニンジン」をぶら下げることが、モチベーションを高める最善の方法だと考えている経営者もいるだろう。より高い給料、よりカッコいい肩書き、人がうらやむ特権などだが、そんな軽薄なことでは社員のやる気を奮い立たせることはできないことが、あらゆる研究からわかっている。人を「やる気」にさせるのは、自らの仕事においてあるレベルの「裁量」をもつこと、自分の仕事を「極める」こと、そして、仕事の「意義」を感じられること、この三つだ。「理想的な仕事」を持っている人は、自らの仕事において、自分が舵を取っているという実感があり、また、目的意識に溢れている。自分が優れた仕事をしている、そして日々向上しているという確信がある。自分の仕事が、世界をより良くするものだと心から信じている。

ギャラップの調査を見ても、「目的意識」が社員のエンゲージメントを高めるうえでの「キー」であることがわかる。ギャラップの調査結果によると、目的意識の高い会社においては、社員の73%が会社に「エンゲージ」している。反対に、目的意識のない会社では、「エンゲージ」しているのはたったの23%だ。スタンフォード大学ビジネス・スクールでは、6年間にわたり、「目的意識をもつ会社」と「持たない会社」の業績の伸びを比べたが、「目的意識をもつ会社」のほうが15倍も高い成果をあげていることがわかった。

ハーバード大学が行った別の調査によれば、コア・パーパスとバリューに支えられた強い企業文化をもつ組織では、売上成長は普通の会社の4倍、雇用創造は7倍、株価の成長は12倍だった。自らが「大切」と信じる目的の実現に向けて力を注いでいると、人も会社も幸せを感じ、より高い成果をあげるということだ。

会社のコア・パーパスを見つける
コア・パーパスが重要なことはわかったが、ではいかにして自分の会社にふさわしいコア・パーパスを見つければいいのか、そう思っている人もいるだろう。コア・パーパスの探求とはプロセスであり、旅路である。それに取り組むにあたっては、社内の複数の人を巻き込み、その人たちの知恵や情熱の力を借りて作り上げていくのが望ましい。自分が力を注いで作ったものを人はサポートするものだ。

まず、コア・パーパスとは何か。コア・パーパスとは、会社としてどのように社会に貢献したいのかを明確に定義するものである。売上や利益を超えた目的は何なのか。会社は何のために存在しているのか。驚くべきことに、普通の会社では、自分の会社が何のために存在しているのか、何に情熱を持っているのかを理解している人は少ない。ギャラップの調査によれば、「フロントライン」と呼ばれる、現場で顧客との接点に立つ社員のうち、会社の存在意義、目的や使命を理解しているのはたったの37%だった。この現実をよく噛みしめてほしい。「フロントライン」の社員たちは、会社の「ブランド」を体現する重要な役割を担うべき人たちだ。もし、会社の存在意義や、目的や、使命を理解している人が全体のわずか3分の1であるとしたなら、残りの3分の2の人たちは、果たして会社の「ブランド」を体現できているだろうか。

コア・パーパス探求のプロセスを経て、それに関わる社員は、会社が大切にしていることや、会社が情熱を傾けることについて明確に理解する。コア・パーパスが明確に見えてくるのは、次の三つについて理解する時だ。

〇世界は、あなたの会社に何を期待しているのか
〇何のためにできた会社なのか
〇何を実現したいと思っているのか

成果をあげるためには、これら三つの要素すべてを理解することが必要であり、会社の「目的」はこれら三つの質問への答えが交差するところにある。ただし、これらの質問ははじめにタックルするには大きすぎるかもしれない。次のように、もっとかみ砕いた質問から始めてみよう。

〇あなたの会社の事業や役割について、あなたが「好き」と感じるのはどんなことか
〇あなたの会社の事業や役割について、あなたが「やりがい」や「生きがい」を感じるのはどんなことか
〇あなたの会社の事業や役割について、あなたが最も「誇り」に感じるのはどんなことか。会社で語り継がれている逸話や、あなた自身が体験したこと、見聞きしたことで、「この会社で働いていてよかった」と感じさせるストーリーは何か
〇あなたが情熱を感じることで、会社の仕事がその実現をサポートしてくれると思うのはどんなことか

これらの質問に対して各自の答えを持ち寄ったら、次のステップは、それを「会社のコア・パーパス」を表現する形にまとめることだ。コア・パーパスを文章に書き表すにあたって、次の5つのステップを踏むといい。

1.「いかにしてそれを実現するのか」は考えずに書く
「いかにして(HOW)」は変わっていく。だから、この段階では、「HOW」を考える必要はない。むしろ、会社の存在の根本を支える、変わることのない「意義」「モチベーション」を書き出すよう努力しよう。

2.焦点を定め、広げ過ぎない
会社にとって、「何が一番大切なのか」に焦点を定める。いろいろと尾ひれをつけたくなるが、広げすぎ、言い過ぎは差し控える

3.シンプルに保つ
かっこいいこと、奇をてらったことを狙うのではなく、わかりやすさを追求する。コア・パーパスはキャッチコピーではない。

4.高みを目指す
会社が最大の能力を発揮することにより実現しうる「崇高な目的」を掲げる

5.抽象的すぎない
社会にもたらしたい貢献を具体的にイメージしやすいように表現する。「業界に革命を起こす」や「世界を変える」など、抽象的な表現は避ける。「世の中を良くする」ということは、あなたの会社にとっては何を意味するのか。

***次号に続く****

*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです

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