コア・バリュー・リーダーシップ

働く人の60%が自分の仕事に「意義」を求め、86%が会社は社会や自然に対し責任ある行動をとるべきだと信じています。しかし、自分の会社がそのような責任を果たしていると感じている人は少ないのが現状です。70%が会社は利益のことばかり気にかけ、地域社会や顧客、従業員の利害より、自分の利益を優先すると感じています。

コア・パーパス(企業の社会的存在意義)」は働く人の心を奮い立たせる焔です。それなのに、ほとんどの会社がそれを見過ごしています。これはほんとうに残念なことです。会社の生産性、従業員エンゲージメント、顧客満足度、欠勤率などあらゆる指標を見ても、働く人の大多数が、コア・パーパスを日々の仕事の中核に据えて働く会社のほうが優れた結果を生んでいます。

職務内容以前に、職務の「目的」や「意義」が重要です。出発点となるべきは「何をするか」ではなく、「なぜ、何のためにするのか」です。だから会社の求人広告も、職務内容の記述だけではなく、職務の「目的」や「意義」の説明を含むべきです。

アメリカに「モリー・メイド」という家事サービスのフランチャイズ会社がありますが、この会社で売上トップの加盟店オーナーは、「仕事の意義」について常に従業員にこう言って聞かせているといいます。「ただ家の掃除をしているのではない。お客様に『余暇という贈り物』を差し上げているのだ」と。またこうも言っています。「私たちの仕事は、独りぼっちの寂しさを和らげることでもある」と。顧客の中には、一人暮らしの高齢者も多くいます。家事サービスの人が家に来ることで、話し相手にもなり、そのひと時だけでもお年寄りは孤独の痛みを忘れることができるのです。

働く人たちの心に「やりがい」の焔を点す最も効果的な方法は、リーダーが自らの「コア・パーパス」について自分の言葉で表現し、その実現に向けて日々行動することです。そうして初めて、働く人たちと本音で会話できる場をつくることができます。

もし、明日、宝くじが当たって大金持ちになったとして、それでも会社に働きに来るだろうか。もし来るとしたら、それはなぜか。どんなことが動機になっているのか・・・。チームの皆で話し合ってみましょう。そして、各人と仕事についての対話を持つとき、単に「役割」について語るのではなく、「意義」について語るように心がけましょう。顧客に対して、同僚に対して、また会社に対して、各自の仕事はどんな価値を提供しているのでしょうか。

そうした会話や対話を踏まえて、同僚や部下が自らの仕事を体現するような振る舞いをしたときに、口に出してそれを承認、称賛、奨励することが大切です。それが、大多数がコア・パーパスを体現する組織づくりにつながるのです。

(注:本記事は、『コア・バリュー・リーダーシップ 石塚しのぶ著 PHPエディターズ・グループ』から抜粋、加筆、修正したものです。)