本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2017年3月31日)。

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社員の「本音」を聴くには

「良いことだけを聞きたいわけじゃない」と、たいていの社長さん/CEOは言います。問題が大ごとにならないうちに、良いことも、悪いことも、時には聞きづらいようなことも分け隔てなく知りたいのだ、とほとんどのリーダーは思っていることでしょう。しかし現実は、言うほど簡単ではありません。社長/CEOも人間ですから、「聞きたくない」ことが態度に出てしまうこともあるでしょう。忙しいことを理由に聞き流してしまったり、威圧的な態度をとったりすることが、本音を話すことから社員を遠ざけることになっているかもしれません。

しかし自分にへつらう人たちだけを周囲に侍らせておくことは、リーダーにとっても会社にとってもプラスになりません。自分に異論を唱える人を辞めさせたり、そういう人たちの意見に耳を貸さなかったり・・・。そういったリーダーの振る舞いが、問題を大きくし、会社を破滅に追い込むケースも多くあります。

社員からのフィードバックを促進し、「悪いニュース」も遠慮なく話せる環境をつくるためにはどんなことに留意すべきでしょうか。リーダーができることには以下の6つがあります。

【1. 間違いを素直に認める】

オープンで正直な企業文化を育むためには、まずはリーダーが自分の間違いを素直に認めることです。ある社長さんは自分が関わった商談がうまくいかなかった時、その理由を社員にオープンに話すようにしているといいます。全社員にメールを送り、何が破談の原因だったのかを話し、社員のアドバイスを求めるようにしているということです。それが、社員の中にも、オープンで正直な姿勢を育むことになっているといいます。

【2. 積極的にフィードバックを求める】

会議の時には、オープンかつ謙虚な態度で社員の意見を求め、自分が話すことより、皆の意見を聞く方により多くの時間を費やしましょう。例えば自分が提案した事項についても、「賛否両論を聞きたい」とはっきりと意思表示しましょう。そして、仮にネガティブな意見であっても、それが原因で個人的に悪感情を持つことはないことをあらかじめ約束して、社員が安心して意見を述べられるようにするといいと思います。

上司の意見に反論することは容易なことではありません。ですからその勇気を称え、貢献に感謝の意を示しましょう。望む望まないに関わらず、上司であるということは部下に対して権力をもつということです。権力をもつ人を怒らせたいとは誰も思いませんから、自ずと発言に慎重になります。自由な発言を促すように努めましょう。

【3. 自分の感情に気を配る】

人の意見を聞く時には、いつにも増して自分の感情に気を配りましょう。ボディ・ランゲージや顔の表情に注意しましょう。リーダーの苛立ちに社員は極めて敏感です。ですから、できるだけ平常心を保ちましょう。

怒りをあらわにしたり、皮肉を言ったり、その人の揚げ足をとったり・・・。そういう反応をされた人が、二度と正直なフィードバックをくれることはないでしょう。また、そういうやり取りを目にした周囲の人も、決してオープンに意見を言うまいと心に誓うはずです。

【4. 感謝の意を表現する】

人生における最良のコーチは、自分の間違いを正してくれる人たちです。「もし苦情を受けたら、顧客に感謝しなさい。それを機会により良いサービスを提供できるから」とはよく言われることですが、社内の会話についても同じことが言えます。

社員からのフィードバックを顧客からの苦情同様に受け止め、改善の機会として考えましょう。チームから意見やインプットを受け取ったら、それに対して心から感謝の意を述べましょう。それが仮に聞きづらいことでも、それをあえて口に出してくれた人の勇気に感謝し、それをいかに改善に活かすことができるかについて考えましょう。そして、それを取り入れるか、あるいは取り入れないのであればその理由を冷静に説明しましょう。そうすることによって、社員からのフィードバックを奨励することができます。

【5. 社員と交流する】

社内を歩き回り、社員と交流すること、これはアナログではありますが、極めて実践的で効果の高いマネジメント・プラクティスであるといえます。一見、「世間話」と思えるようなことでも、特に、普段あまり交流のない社員とカジュアルに話をすることで、学べることがたくさんあります。自分の部屋やデスクから離れて社員と触れ合うことで、「ボス」という肩書でなく自分の人間的な側面を社員に見てもらい、コミュニケーションを取りやすくすることにつながります。実際的にも、感情面でも、「話しやすい」環境を意図的につくるリーダーのところにフィードバックが集まるのは当然のことです。

【6. 相談役を見つける】

昨今のリーダーに要求される資質の中で最も重要なもののひとつは「自己認識」です。自分の性格、強みと弱み、自分がもつ偏見や固定観念、そして、感情のツボなど、自分についてできる限り学ぶことが必要になります。時と場合によっては、そうした認識向上をサポートしてくれる相談役やコーチを雇うことも有益です。コーチは、周囲の人との関係性や、なぜ、自分がある特定の事柄について特定の反応をしてしまうのか、そうした問題について考えるうえでのヒントをくれます。もし、周囲からは「良いニュース」しか聞かれないと感じたら、外部から信頼のおける相談役を雇う時です。

かつては、「経営学」や「マネジメント」といえば、財務や戦略などの「ハード・サイエンス」ばかりが重視されていました。しかし昨今では、「会社は人がつくるもの」という気づきを出発点にして、「会社にとって最も貴重な資源である『人』をどのように有効活用するのか」が最も重要で最も困難な課題として論じられるようになってきています。人間は感情の生き物です。数値や方法論だけで割り切れるものではありません。自分や他人の感情面をどのように「コントロール」するか、それが、必要不可欠なリーダーシップ・スキルとして注目されているということです。

(注:この記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです)

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