本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2018年9月27日)。

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マインドフル・リーダーシップ:五つの習慣

「リーダーである」ということは天からの授かりもののようなものである。人を導き、その生活を豊かなものにする機会を与えられているのである。この「機会」には「責任」がつきものだ。たいていのリーダーは、この機会をベストに活かし、人々の生活にポジティブなインパクトを与えようと全力を尽くすが、それでも、日々遭遇する諸々の問題に気をとられてしまうことがある。

リーダーとは苦境にめげず、日々のストレスをやり過ごすことに長けている人たちなのだろうと思われがちだが、リーダーであるということはそれ特有のストレスと対峙するということであり、それに対処するのは容易ではない。「マインドフル・リーダー」であるということは、ストレスを管理し、やる気や、認識や、創造力を常に高いレベルに保つために、堅固な習慣を身に着けているということである。

世の「マインドフル・リーダー」が習慣的に行っていることを、参考までに以下のリストにまとめてみた。

1.人と話をしている時には、相手に100%注意を向ける
たとえば会議中には、会議の参加者に100%注意を向ける。従業員が問題を抱えて相談に来たら、それを直ちに自分の頭の中で解決しようとするのではなく、従業員が言っているすべてのことをもれなく、批判することなく聞くようにする。

人の頭の中は、常に煩雑なつぶやきに溢れているものだ。ある研究によれば、人が起きている時間の半分近くは、脳が「さまよっている」状態にあるという。しかし、そこで意思と選択肢をもつこと。それが重要だ。「集中できないから」といって脳をさまようままに任せておくか、それとも、目前にあるタスクにすべての力や意識を集中するよう訓練するかどうかである。

2.思慮深い決断をする
どんな決断も個人の偏見や、批判や、感情に左右されるものだ。リーダーは毎日のように数えきれないほどの決断を下す。その決断を、あなたは頭で、それとも心で下しているだろうか。「マインドフル・リーダー」とは、頭と心の両方でバランスのとれた決断を下す人のことを指す。

しばし立ち止まり、自分の偏見や、批判や、感情を見つめなおしてみよう。そうすれば、より良い決断ができるはずだ。偏見や、批判や、感情に注意を向けることを「チェック・イン」と呼ぶ。溢れてくる感情に反応しているだけなのに、「正しい決断を下している」と勘違いしていないだろうか。自分の思考や感情を冷静に観察したうえで、決断を下し、次へ行く。「マインドフル」であるということは、頭の中の「認識の筋力」が鍛えられていて、感情のコントロールができること、そして、偏見や批判に傾くことなく冷静に評価し、決断できる能力を身に着けることを指すのである。

3.チームの仲間に権限委譲する
従業員、あるいはチーム・メンバーが問題や、難題や、ある議題について相談に来たらどうするか。質問を通して彼らを導き、彼らなりの決断を自ら下せるようにサポートできるだろうか。彼らが素晴らしい仕事をしたり、適切な判断をしたりした時に、称賛したり、成果に報いたりしているか。反対に間違ったことをした時にそれを指摘することができるか。人は、リーダーの信頼を得、権限を任されていることを認識した時により良い成果を上げるものだ。もちろん、リーダーが考えるのとは異なる決断を下すこともあるが、それが間違いというわけではない。問題への解決策は一つではないのだ。「誰が言うか」によって物事の正しさが判断されてはいけない。

チームの質はリーダーの質で決まる。「マインドフル・リーダー」は、チーム・メンバーに100%注意を向け、その強みや成果を認める。弱みや落ち度には辛抱強さをもって接し、チームを成功に導くための「パートナー」としての立ち位置にある。

4.夜、十分に睡眠をとる
睡眠を優先することはちっぽけなことに思えるが、そうではない。夜十分な睡眠をとっていると、翌日により「マインドフル」に振舞うことができ、人とのやり取りからより大きな成果が生まれる。もちろん、いつも物事が完璧に進むわけではない。しかし、ちゃんと睡眠をとっておけば思考能力を妨げられたり、苛々して人に八つ当たりをしたりすることがない。自分に自信を持って振舞うことができる。「結果」をコントロールすることは誰にもできないが、自分の振舞いはコントロールできる。危機的状況の中でとっさに下してしまった感情的決断について、その後悔を水に流す。あるいは、最近連絡がとれていない顧客についてやきもきするのをやめる。そうしたことには長年の訓練と習慣づけを要する。しかし、リーダーが感情的なしがらみや後悔を水に流し、次に進む能力を身に着けたなら、翌日には新鮮なアイデアと活力をもって状況に対処することができるはずだ。

「マインドフル・リーダー」とは、たとえほんのひと時でも、立ち止まり、ペースを落とし、ひと息つける人のことを指す。もし眠れぬ夜を過ごしているなら、「マインドフルネス」の恩恵であるバランスを欠いているということだ。

5.毎日メディテーションする習慣がついている
忙しい毎日の中でも、「一日に一度はメディテーションする」ことを習慣づけていること。リーダーの多くが「権力に伴うストレス=パワー・ストレス」に悩まされている。権力に伴い、責任もつきまとう。また、トップ経営者であればそれなりの孤独感もある。自分の決断が、従業員の生活にも影響するというプレッシャーもある。また、会社の外では、家族や、地域社会に対して負う義務もあるだろう。「メディテーションする時間がない」という愚痴をよく聞かされるが、それでも、意識して時間をつくらなければならない。

もしなかなか続けられないのであれば、人に宣言することもひとつの方法だ。例えば90日間毎日メディテーションすると決めて、それをチームの皆に宣言する。そして、90日が終了した時点で、何か変化に気づくか皆の意見を聞くのだ。

一日5分、20分でも大きな変化が生じる。20分でもメディテーションすると、20分間損をするのではなく、気持ちに余裕ができて反対に20分間得をしたような気分になるものだ。メディテーションは、「パワー・ストレス」にうまく対処するひとつの方法でもある。メディテーションが脳内のホルモンに影響し、ストレスを軽減し、健康の向上につながることはあらゆる調査結果においても立証されている。

メディテーションの習慣をつけることは、強い意志と規律を要することではある。しかし、これらは良きリーダーの資質でもある。「マインドフル・リーダー」になるための一歩を思い切って今日にでも踏み出してみることをお勧めする。

*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです

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