本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2018年4月27日)。

****************

あるスモール・ジャイアンツのコア・バリュー・ストーリー(第六回)

コア・バリュー経営協会では、コア・バリュー経営の実践企業において、社員による「コア・バリュー・ストーリー」が共有されることを奨励しています。しかし、「コア・バリュー・ストーリー」と言われてもいったいどんなものかピンとこない、という皆さんのためにアメリカのスモール・ジャイアンツ(ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるデザイン会社)の例を用意してみました。今日はその最終回です。

私たちのコア・バリュー:奉仕の精神

エクスペリエンス・デザイン・コンサルタントとして、私たちは自らをビジョナリーだとか、イノベ―ターだとか、次なるスティーブ・ジョブズだとか、自意識過剰な名称で呼びたがる傾向にある。

ごくまれなケースで、これらの名称が正しいこともあるかもしれない。だが、現実世界では、デザイナーというものは「スティーブ・ジョブズ」よりは、「ウェイター」にもっと近いものだ。

私たちのコア・バリューである「奉仕の精神」はこの現実に即している。このコア・バリューを実践する方法はたくさんあるが、例をあげれば、年に2回の有給のボランティア・デイに参加したり、全社的なボランティア・イベントを企画したり、地域の学校でデザイン・ワークショップを行ったり、寄付を募ったり、同僚のためにボトル入り飲料水を一ケースもって階段を上がってあげたり・・・いろいろだ。

【奉仕の精神】
同僚に、クライアントに、私たちの助けを必要とする人たちに、そして私たちの業界の進歩のために、期待されている以上のことをしよう。

上に述べたような活動はみな素晴らしいものだが、私たちの会社では、サービスは「ボランティアをする」ことだけではないと考える。どのコア・バリューも解釈の方法がたくさんあるが、この「奉仕の精神」というコア・バリューが最後にリストされているのには正当な理由がある。それは、このコア・バリューが他のコア・バリューの要素を少しずつ含むものだからだ。

もちろん、私たちの会社は営利目的のもとに存在する。一般的に解釈されるところの「奉仕」とは、資本主義の考え方とはまったく対極にあるもののように思われるかもしれない。しかし、「奉仕の精神」は私たちの会社や、私たちが専門とする分野の基盤となるものである。

日々の成長と成功は「奉仕の精神」によってもたらされる。私たちの会社では、「助け合い」の仕組みが業務の随所に組み込まれている。すべてのコア・バリューは相互的に作用する。卓越を目指すためには、継続的に向上しなくてはならない。向上するためには、忌憚のない正直なフィードバックが必要だ。そしてフィードバックが聞き入れられるためには親切さが必要であるし、個人や会社のゴールを達成するためには協力して働くことが必要になる。奉仕の精神を実践するためには、今述べたようなコア・バリューのすべてが必要になる。会社の中の全員が、毎日それを実践することが期待されている。

クライアントに選ばれたからには、私たちはクライアントと運命を共にし、共に働く。私たちは常に正直に意思疎通をし、コンスタントに質問をし、クライアントのチームを社内に招いて共に働く機会をもつ。クライアントは私たちのプロセスに密接に関わることになる。何週間も沈黙が続いて、突然連絡が来たと思ったら予期せぬサプライズが待っている・・・などということは決してない。

私たちの会社では、「共感」をとても大事にしている。「サービス」という行為はある種の「共感」を実践することだ。サービスの作り手として、デザイナーとして、私たちは、クライアントが求めている「予期せぬ成果」を結果として手にすることができるよう働く。

それは理にかなわないことのように聞こえるかもしれない。最初のウェイターのたとえに還ると、それはレストランの給仕が、顧客であるあなたが自分では思いもつかなかったようなワインを勧めてくれて、その結果、そのワインがその食事を一貫して素晴らしい体験にしてくれること。そのウエイターのような役割を果たすことが私たちが目指すことなのだ。

*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです

コア・バリュー経営協会の会員についての詳細はコチラ