本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2018年1月25日)。

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あるスモール・ジャイアンツのコア・バリュー・ストーリー(第三回)

コア・バリュー経営協会では、コア・バリュー経営の実践企業において、社員による「コア・バリュー・ストーリー」が共有されることを奨励しています。しかし、「コア・バリュー・ストーリー」と言われてもいったいどんなものかピンとこない、という皆さんのためにアメリカのスモール・ジャイアンツ(ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるデザイン会社)の例を用意してみました。今日はその第三回です。

私たちのコア・バリュー:正直であれ

同僚やクライアントとオープンかつ正直に話します。そうすることが、健全な人間関係を産み、私たちが誇れる仕事につながると信じます。

正直さには力がある。人を貶めることもできれば、やる気をそぐこともでき、撃破することだってできる。しかし、良いやり方でやれば、良い結果を生むこともできる。私たちのような職種にとってはなくてはならないものだ。正直であることによって、私たちは同僚をサポートし、顧客をサポートする。そして、結果的に会社をサポートするのだ。私たちがチーム内で会話する時、次のような討議が頻繁に行われる。「コンサルタントとして、『クライアントが聞きたいこと』ではなくて、『聞くべきこと』を伝えなくてはならない。たとえ、それが彼らにとって、『聞きたくないこと』であっても」もし、正直に話し、問題の根源を突き詰めることができなければ、潜在的に素晴らしい成果をもたらすような仕事も中途半端に終わることになる。

クライアントとの第一回目の会議の際に、私たちはきまって、私たちが定義するところの『創造的パートナーシップ』について話す。これは、オープンで正直なフィードバックを相互的に提供しあうことから生まれるものだ。時々、意見が合わないこともあるだろう。私たちが頑固に主張をすることも、クライアントが頑固に主張をすることもある。素晴らしい成果をあげるためには、それは双方向の交換でなくてはならない。私たちとクライアントとの関係は真の意味での「パートナーシップ」なのだ。そして、パートナーシップの成功のためには、「信頼」が必要不可欠だ。

【信頼は建設的なコミュニケーションから生まれる】
何かが「建設的である」というのは、それを基盤にして応用することができたり、それを「道具」として何かができたりすることだ。たとえば、「それはダメだ」で終わりにするのと、「ここはもっとこうしたほうがいい」ということの違いである。

また、成果を生むためにはコミュニケーションは双方向でなくてはならない。タイムリーで、建設的であり、役に立つコミュニケーションも、受け手に聴く耳がなくてはムダになってしまう。もし、相手が常に私のフィードバックを煙たがり、常に言い訳がましい態度で受け止めたとしたら、私は気まずさを避けるために、口を開くのをやめるだろう。

双方向に建設的なコミュニケーションを育成し、維持していくためには、相互的な努力と合意が必要なのだ。

【共感と時間が信頼を育てる】
私たちの会社では、「共感する」「弱みを共有する」「オープンである」ことを通して信頼を育む。また、「ナイスである」ことを通して、お互いを信頼し、正直になれる環境をつくっている。私たちは事業について、そしてお互いについて心の底から気遣い合う家族のようなものだ。私たちが取り組んでいることが世の中のためになるのだ、と知ることにより、そして、それが私たちが入社時に約束したことだと認識することで、「正直である」ことはずっと容易になる。だからといって、自動的に信頼が築けるわけではない。信頼は努力により築かれるものだ。そして、信頼を築くのには時間がかかる。

クライアントの多くは、設立当初からのクライアントである。また、私たちの会社の離職率は、この業界においては異常なくらい低い。高いクライアント維持率と低い離職率は偶然では決してない。

【正直さのレシピ】
この文書の執筆を頼まれた時、私は休暇でオーストラリアに行く準備をしている最中だった。「休暇中に文章を書くのは好きだからいいですよ」と私が承諾のメールを返信すると、数分後に電話がかかってきた。

それは私の上司からの確認の電話だった。私がメールに書いたことが建前でないかどうかを確かめるために電話をかけてきたのだ。私は「飛行機の中だと気が散らなくて執筆が進むから良い」と説明し、建前でなくて本心から書いたことであることを説明した。「そうだとは思ったけど、一応確認しておきたかったので」と上司は笑って話していた。

私の上司が自分の憶測をただ信じることをせずに直ちに電話をしてきたこと、そして、私が彼の質問に正直に答えられたことは、私たちが長年をかけて共に働いてきて、信頼を築いてきたからこそできたことだ。大それた前置きや、躊躇や、過剰な気遣いを必要とするものではない。信頼があれば、そんなことに時間や労力を費やす必要なく、より大きく、より重要なことに向かって挑戦することができる。

*注:本記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです

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