本記事は、コア・バリュー経営協会会員向け記事として作成されたものです(2016年9月30日)。
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コア・バリュー経営と営業チーム:より結束の固い組織をつくるために

「会社全体のコア・バリューに反するものでない限り、部門ごとのコア・バリューがあってもいいのでは?」

こういう質問をよく聞きます。しかし、コア・バリュー経営的に考えると、コア・バリューは全社的に統一されているべきだ、というのが私の意見です。

特に営業部門は、多くの会社で、「独特の存在」として取り扱われる傾向にあります。

採用のプロセスも違えば、待遇も違う。給与形態も違えば、評価もフィードバックの仕組みも違う。などということがざらにあります。

結果として、営業部門があたかも異なる独立した会社のように振舞うという状況が起こります。これが頻繁に見られます。同じ会社に属していながら、異なる性格と、独自のルールをもつ集団のように振舞うのです。

このような分裂は会社組織に大きなダメージをもたらしますが、中でも致命的なのは以下の二つです。

 〇社内の部門間のコミュニケーションやチームワークがうまくいかない

 〇会社としての独自性・個性が薄れる

そもそもどうして「企業文化」が大切なのでしょうか。働きやすい環境をつくるため。世の中の役に立つ会社をつくるため。もちろんそうです。しかし、もうひとつ、忘れてはならないのは「独自性を築くため」ということです。変化と競争の激しい今日の市場においては、企業にとって、これが絶対必要条件になってきました。独自の企業文化をもつ会社というのは、優れた商品やサービスを提供し、それ相応の対価を得ることのできる会社です。決して、低価格を売り物にした会社ではありません。

コア・バリュー経営を行う会社は、確固たる信念をもち、それを世の中に広めたいと思っています。究極的には、「ビジネス」や「経営」に、新しいやり方、より良いやり方、より斬新で、創造的な、「人の心を奮い立たせるような」やり方でアプローチすることで、世の中にポジティブなインパクトを与えよう、それが、コア・バリュー経営の目指すところです。

営業部門が会社のコア・バリューを共有しなければ、「独自性」ではなく、「価格」を売り物に売ることになります。コア・バリューは行動の基盤になるものだからです。コア・バリューが徹底されている会社では、営業のプロセスも、競合他社、いわゆる「普通の会社」とはまるで異なるものになります。

見込み顧客の判定から、顧客への接し方、ニーズの査定の仕方、プレゼンテーション、営業トークの運び方、価格交渉の仕方、取引成立後のフォローアップに至るまで、コア・バリュー経営を実践する会社では、すべてのステップが、コア・バリューに基づくものになります。

冒頭でも述べたとおり、営業部門は、独自の採用プロセスをもち、研修も、給与形態も、社内の他の部門とは異なるものをもつかもしれません。しかし、コア・バリューは統一されているべきです。

営業部門に属する一人ひとりが、会社のコア・バリューに賛同し、信じ、日々、それを実践しなければ、独自性を売り物にすることはできません。

営業部門の中で、会社のコア・バリューの認識を高め、会社のコア・バリューに心から賛同してくれる人を増やすには、以下のような演習をお勧めしています。会社のコア・バリューを、日々の業務に「あてはめる」演習です。

例えば、会社のコア・バリューのひとつが、「倫理-常に正しいことをする」だったとします。それは、営業プロセスにおいて、何を意味するでしょうか。

「倫理」に基づいた、「見込み顧客の判定」「顧客対応」「ニーズ査定」「プレゼンテーション」「営業トーク」「価格交渉」「取引成立後のフォローアップ」とは、どういったものでしょうか。「普通の会社」の行動とは、どこがどういうふうに異なるのでしょうか。

「チームワークと協業」ではどうでしょう。「チームワークと協業」に則った営業プロセスとは、どういったものになるでしょうか。

コア・バリューを「ただの壁の上の掲示」から実践的なものへと「翻訳」する作業が必要です。営業という「仕事」をこなすうえで役立つものだと認識してもらわなければなりません。

もし、企業が、その独自性を「売り物」とし、市場における差別化要因とするならば、営業担当者たちはその独自性の「伝道者」となる必要があります。そうするためには、各自が会社のコア・バリューに心から賛同し、その実践に関する納得感をもつことが必要なのです。

 〇貴社の営業部門は、会社のコア・バリューを共有していますか。

 〇営業担当者に会社の独自性の「伝道者」になってもらうために、採用、教育、コミュニケーション、報奨にどのような工夫を施しているでしょうか。

経営者としては、上の二点について自問自答し、より結束の固い会社づくりに取り組んでいかれることをお勧めします。

(注:この記事は、米スモール・ジャイアンツ・コミュニティによるインタビュー記事に基づき、ダイナ・サーチが独自の視点や見解を加えて作成したものです)

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