ザッポス社CEOのトニー・シェイは、著書『Delivering Happiness(邦題『ザッポス伝説』)』の中で、人が幸せを感じるために必要な条件のひとつとして「つながり」を挙げています。よく言われることですが、人間というのは社会的動物であり、機能的そして感情的な意味での「一人で生きていく」ことは不可能です。たとえ、一生かかっても使いきれないような莫大なお金があったとしても、「私は人の役に立っている」「私は必要とされている」「喜びも悲しみも分かち合うことができる人がいる」と実感することができなければ幸せを感じることはできないでしょう。

企業は人の集合体です。企業という組織の中で、その構成員の一人ひとりが周囲の人たちと「つながっている」と実感できるかどうか、自分が周囲の人の役に立っていて、その価値が認められていると感じられるかどうかが第一の前提となりますが、その他に、企業として「社会の役に立っている」「社会とつながっている」という実質的な認識があるかどうかが、今後、企業の健康を測る上で無視することのできない指標になってくるでしょう。

だからこそ、「自社の提供する商品やサービスが社会にどんな価値をもたらすか」、言い換えれば「コア・パーパス(会社の存在意義)」を明確に定め、構成員全員がそれを共通理解することがもちろん必要なのですが、社会生態系の中に住む「会社」という生命体として、周りにどんな貢献をしているのかということが極めて重要になってくるのです。

つまり、社員の目に一番見えやすい、そして、社員が実質的に関わりやすい、実感しやすい方法として、会社が地域社会とどう関わりあい、より良い未来に向けてどう働きかけていくかが、つまり、「コア・パーパス」を明確に定義することが、企業の成長戦略の一環として欠くことのできない要素になってくると思います。

記事/ダイナ・サーチ、インク 石塚しのぶ